◎日本共産党 吉井議員 財務金融委 課税最低限引き上げのためのまやかしの議論やめよ

 日本共産党の吉井英勝議員は六日の衆院財務金融委員会で、政府が課税対象を広げるために「日本の課税最低限は国際的にみて高すぎる」として引き下げを検討している問題について、「課税最低限がどうあるべきかは、その国の実情と国民の要求にもとづいてつくられるべきだ」と主張しました。
 吉井氏は、財務省が課税最低限の国際比較に為替レートを使っていることについて、「本来、税についてはその国の物価水準でどれだけの生活物資やサービスを購入できるかを示す購買力平価で比較するのが筋だ」と指摘しました。
 吉井氏が示した資料でも、財務省の試算でも、購買力平価で計算すると低所得者への手厚い諸手当制度で税負担率をかなり免除しているイギリスを除き、日本は各国の水準を圧倒的に下回っています。
 財務省の大武健一郎主税局長は、「為替レートが一番参考になる」と反論を試みました。これにたいし、吉井氏は、財務省の武藤敏郎事務次官が高級公務員の賃金水準の国際比較については、「購買力平価の関係があり単純に為替レートで比較できない」(月刊雑誌『時評』2001年2月号)と主張していることを指摘。一方で、財務省が国民の税負担水準については、為替レートでの換算にこだわるのは、「庶民増税おこなうために自分たちの有利な数字だけを引き出すやり方だ」と批判しました。

  

<課税最低限の引き下げ問題資料>

〔質問のポイント〕

1.今日の税制上の問題

  • 所得税の最高税率引き下げなど累進緩和を中心とする高額所得者減税法人税の税率引き下げなどの大企業減税  
    この2つの税負担のフラット化によって次の問題を生み出した。
  • 公平・公正であるべき税制の所得再分配機能が著しく弱まった税収の空洞化がすすみ、経済が良くなっても税収増が期待できない仕組み、つまり財源調達機能を著しくなくしてしまった
    所得税の空洞化の原因は、非納税者が4分の1が問題ではないこの間、景気低迷で所得が落込んで減収になったこと、  最高税率引き下げなど累進緩和の高額所得者向け減税の繰り返しの結果国民所得に対する所得税負担率の低下もそうした結果によるもの。

2.税制抜本改革

  • 喪失したこの二つの機能を回復させる税制の民主的再建が柱となるべき直接税中心、総合・累進、生計費非課税の原則にたったもの。
  • 小泉首相は、「だれもが負担し、努力が報われる税制」といって逆の事をすすめる。  
    課税最低限引下げや消費税増税など庶民増税と、一方で高額所得者や大企業に減税  
    ますます税収の空洞化を招く。

3.増税を仕掛けるまやかしの「4分の1論」

  • 塩川財務大臣は財政演説で、突然「税負担の空洞化」を強調  
    わが国の所得税課税最低限が高すぎる
    「働いている人のうち4分の1が所得税を負担していないのは異常」
  • 政府提出資料−「非納税者率」
      80年  34・0%
      85年  29・5%
      90年  25・1%
      95年  23・0%
      00年  26・0%
      実際には、80年の34%が00年には26%へ非納税者が減って納税者が率でも絶対数でも増えている。

4.「日本の課税最低限は国際的に見て高すぎる」論は本当か


 ・財務省も購買力平価で試算−その結果は高すぎない
  (表1)委員会提出資料
       −OECD(経済協力開発機構)が毎年発表している購買力平価で計算
        00年平均で、1ドル=156円、1ポンド=241円、
              1マルク=84円、1フラン=25円
        為替レートと購買力平価との倍率は、1.3倍から1.6倍近い
  (表2)財務省提出資料

  • 財務省の発表データは、「課税最低限の国際比較」に為替レートを使用  
    政府はこれをもって 「主要国中最も高い水準にある」と説明してきた。
  • 購買力平価による国際比較では、「夫婦子二人の給与所得者」の場合でも、「夫婦子一人の給与所得者」の場合でも、イギリスを除き、日本は各国水準を下回る
  • 「課税最低限の引下げ」を主張する財務省の幹部の生活実感
    武藤敏郎現財務事務次官は、「高級公務員の賃金水準は国際的に比べ高いのでは」との質問に、「購買力平価の関係があり単純に為替レートで比較できません」「いずれにせよ国家公務員の給与は人事院勧告に従って決められています」と答える。(「21世紀初頭は財政構造改革のラストチャンス」・月刊雑誌『時評』2001年1月号)
  • 00年3月7日(火)、大蔵省内の「21世紀初頭の財政政策のあり方に関する研究会」第6回会合で、森信茂樹大阪大学教授(当時。現在財務省の財務総合政策研究所次長)がわが国の所得税について「給与収入毎の所得税の負担割合を表す実効税率カーブを示し、日本の負担割合が低いこと、とりわけ3000万円以下の所得層で低い」などと報告したことに対し、為替レートにもとづいたその実効税率カーブに関して、参加メンバーから「購買力平価で比較しないと税負担感の国際比較は難しいのではないか。・・・為替レートで比較すれば1千万円は1千万円なのですが、おそらくアメリカとかヨーロッパ諸国の中では日本の1千万円以上に消費財の量に換算した場合にもっと価値を持つわけだから、その辺を少し考えなければいけないのではないか」と指摘。これに対し報告者の森信氏は「おっしゃることは良く分かるし、確かにそういう視点も必要かと思う」と答えている。

5.各国の独自の事情−もともと正確な国際比較は不可能

  • イギリスは、課税最低限が極端に低くなっているが、低所得者にたいし「就労世帯税額控除」(WFTC)制度などの社会保障制度というべき制度で、税負担は事実上、かなり免除。
  • 米国には「稼得所得税額控除」(EITC)制度がある。貧困対策の一つとして75年に開始された所得補助制度。一定額以下の稼得所得の納税者に対し税金の還付を行うことで、低所得者層の税負担を軽減ないし、なくすことによって所得補助を受けている世帯の課税最低限を実質的に引上げることを意図していると言われる。
  • 日本総研の蜂屋研究員の論文「課税最低限の水準に関する一考察」(Review.01.2)
    米国のEITC制度や英国のWFTC制度を紹介
    課税最低限の国際比較をする際、これらを加味する必要性と試算を試みている。
    欧米諸国には、日本とは比較にならない、住宅・教育費に広い控除制度があり、更に扶養控除制度の代わりに手厚い児童手当制度がある。
    これらを総合的に勘案して初めて正確な比較ができる。

6.課税最低限は、国民の生活実態に照らしてどうか

  • 「夫婦と子供二人の標準世帯で給与収入384万2千円」
    =月収約25万6千円のサラリーマン(ボーナス3月)
    配偶者は無職、内子供1人は16歳以上23歳未満の子供で、大学生か高校生
    給与収入25万6千円以外収入のないこのような4人家族が、「標準家族」か。
  • 独身者の場合、課税最低限は114万4千円=月収約7万6千円(一時金3ヵ月分)
    独身者がこれで生活出来るか。
  • これを課税最低限として、生活のなりたたない所得を課税対象にするのが合理的か
    憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
    この課税最低限では憲法25条水準の生活ができない。
  • 課税最低限の最も重要な存在意義は、最低生活費に対する課税の回避である。生活に最低限必要な費用を課税が侵食するならば、富の再分配の以前に納税者の生存自体を危うくしかねない。すなわち、課税最低限は最低生活費を非課税にすることによって、国家が積極的に国民の生存を脅かさないことを基本的な目的にしている。(佐々木潤子立命館大教授「所得税法における課税最低限と最低生活費」97年10月、11月号『民商法雑誌』)
  • それでもこの金額をもって「日本の課税最低限は高い」と小泉内閣は主張して、増税を考えている。