アスベスト被害救済へ/政府、新法の大綱決める

 中皮腫などアスベスト(石綿)による健康被害者を救済するため、政府の関係閣僚会議は11月29日、「石綿による健康被害の救済に関する法律案」(仮称)の大綱を決めました。2006年1月の通常国会に法案を提出、早ければ同年4月にも給付開始を目指すとしています。
 労災補償の対象外の工場周辺住民や労働者の家族などの被害者が対象。時効で労災補償が受けられない遺族も労災認定に準じた給付金の支給を盛り込みました。
 大綱は(救済する被害者を、石綿が原因と認定された「特定疾患」の患者とその遺族と定めました。中皮腫患者は原則として全員救済する見通し。しかし、特定疾患の範囲は明記していません。
 被害者にたいし、医療費と医療手当が支給され、すでに死亡した遺族には葬祭料と特別遺族弔慰金が給付されます。
 大綱は、独立行政法人環境再生保全機構に「石綿健康被害救済基金」を設け、国・自治体・企業からの拠出による基金を充てます。事業救済費用に充てる基金のうち事業者の負担分については、労災保険システムを活用し、政府が「労働者を雇用する事業主」と「船員を雇用する船舶所有者」から徴収すると規定。被害者を出すなどアスベスト関連企業からは上乗せの追加徴収する2段階の制度とします。

 労災時効者の遺族に年240万円

 政府は11月29日、アスベスト(石綿)による健康被害者救済新法の大綱を、与党アスベスト対策プロジェクトチーム(佐田玄一郎座長)に示しました。席上、厚生労働省は、労災申請の時効(5年)を過ぎた従業員の遺族に「遺族特別給付金」として年額240万円前後を支給することを明らかにしました。
 大綱では遺族特別給付金について、労災の時効を過ぎた従業員の遺族は労災給付に準じ、労働保険特別会計の資金で救済すると明示。年額約240万円は賃金の平均データなどを基に算出しました。
 一方、環境省は労災の枠組みで救済できない石綿工場の周辺住民や従業員家族らへの給付額を正式に提示。新法施行前に死亡した患者の遺族には特別弔慰金260万円、葬祭料20万円を支給。闘病中の患者には医療費の自己負担分と療養手当月額10万円を給付、死亡時には葬祭料を支払います。

 解説
 課題多い政府案
 政府が決定したアスベスト被害者救済の新法案では、労災以外の被害者と遺族の救済が初めて盛り込まれました。
 発がん物質のアスベスト対策を怠ってきた政府が、アスベストの健康被害への不安の世論におされて、被害者を救済し、被害予防対策をおこなうことはまさに急務となっています。しかし、政府の大綱は、アスベスト被害の実態に照らしても多くの課題を残しています。
 大綱は給付の具体額を示していませんが、弔慰金(一時金)は260万円前後、葬祭料は20万円、療養手当は月額10万円で検討しているといいます。これでは被害者、遺族が求めている救済制度としてはあまりに不十分です。
 特定疾病については、石綿で生じたかどうかを判断する医学的な基準をこれから決める段階。中皮腫・肺がんのほかの労災対象の「良性石綿胸水」や「びまん性胸膜肥厚」など、救済される範囲もはっきりしていません。
 アスベスト健康被害の予防と被害者を救済することは、政府とともにアスベスト製造・販売などにかかわったすべての企業の責任です。しかし、大綱では国、自治体、企業の負担額も明示されていません。これでは、健康被害にたいするアスベスト関連企業の責任があいまいな救済制度にならざるをえません。

(2005.11.30赤旗)


アスベスト被害/旭硝子が700万円支払い/千葉・死亡労働者の妻と和解

 旭硝子の船橋工場(千葉県船橋市)で働いていた渡辺信義さん(当時52歳)の肺がんによる死亡はアスベストばく露が原因だとして、遺族が会社に損害賠償を求めていた裁判が11月28日、千葉地裁(山口博裁判長)で和解しました。訴訟は12年前の死亡をめぐるもの。この間の労災認定申請は棄却されたものの、弁護団は「加害責任を全面否定していた企業を、肺がんと石綿との一定の関連を否定できないところに追い込むことができ、石綿問題に一石を投じることができた」としています。
 訴えていたのは、亡くなった信義さんの妻、アキ子さん(64)=船橋市在住=。信義さんは1992年、33年間勤務していた同社の在職中に肺がんで死亡。アキ子さんは2002年2月、会社側の安全配慮基準違反による責任を追及して提訴していました。
 和解条項では、会社に@故信義氏の長年の勤務に敬意を表し『定年前の死亡に弔意を表することA遺族への和解金700万円の支払いB1年以上勤務した元従業員に対する会社負担の健康診断の実施、従業員の健康管理と安全配慮を求めています。
 同日、弁護団や支援者とともに記者会見したアキ子さんは「長いたたかいでした。ようやく原因が認められたという思い。当初は石綿が社会問題化しておらず苦労したが、丈夫だった夫が急に亡くなった悔しさから立ち上がらずにはいられなかった」と話しました。

 (2005.11.29、赤旗)


中皮腫死亡リスク/尼崎クボタ工場周辺は全国の18倍

 アスベスト(石綿)の健康被害に関連し、クボタの旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の周辺住民は、工場に近いほど中皮腫で死亡するリスクが高くなり、500メートル以内では最大で全国平均の18.1倍になることが11月23日、車谷典男奈良県立医科大教授(産業疫学)らの調査で分かりました。
 車谷教授が大阪市で開かれたシンポジウムで発表しました。車谷教授は「ほかに発生源は見当たらず、工場から飛散したクロシドライト(青石綿)が工場周辺の中皮腫の原因と推定される」としています。
 調査によると、工場でアスベストが使用されていた1957〜75年に尼崎市内に住んでいた中皮腫患者101人について、家族らに面接を実施。その結果、85人(死亡76人、療養中9人)が、仕事などでアスベストに触れることがなかったにもかかわらず、中皮種を発症したことが分かりました。
 76人の死者について、中皮腫による死亡リスクを全国平均と比較した場合、工場から500メートル以内に住み、2000〜2005年に死亡した人では、女性で18.1倍、男性でも9.8倍になりました。

(2005.11.24、赤旗)


共産党京都府委員会が石綿問題で学習・懇談会/吉井議員が報告

 アスベスト(石綿)問題で、日本共産党京都府委員会は11月22日、京都市上京区で、国会報告を受けた学習・懇談会を開き、府内の地方議員ら約50人が参加。長期にわたる運動の必要性が浮き彫りになりました。
 吉井英勝衆院議員は、@被害実態の把握A住民健康調査と被害者救済B国と企業の責任の明確化−が重要と強調。国には、軍需産業として石綿産業を成長させ、危険性を知りながら使用禁止にしなかった責任があるが、自治体の健康調査さえ支援せずに不十分な新法制定で終わりにしようとしていると批判。党の国会議員団のとりくみや総合対策についてのべました。
 光永敦彦府議は、補正予算で特別健診などが実現したが、対策のための府の条例は国の新法を前倒ししただけの内容にとどまっており、国の通達なども生かして、実態にあう対応がされるようにしていきたいとのべました。
 参加者は、あらゆる場所、また思いもよらない場所に石綿が使われている実態を発言。「追跡調査も含めて被害実態の把握と情報開示が重要」「多くの町で水道管に使われている石綿管の補修時に石綿が飛散している。非飛散性のものでも飛散性に変わることがあるが、国にも府にも全く対策がない」などの意見が出され、検査体制、2次健診や専門医の養成、除去工事が必要な中小業者への支援、また相談活動や署名運動の推進などの意見も出されました。

(2005.11.24赤旗)


胸膜中皮腫10倍・79年――04年の25年/
アスベスト原因・中皮腫死者は9087人/新資料で判明

 アスベストが原因とされる中皮腫の死者が1979年以降、少なくとも9087人にのぼることが11月20日までに、環境省の検討会資料からわかりました。胸膜の中皮腫は79年に62人だったのが04年には647人となり、10倍以上も増加しています。
 厚生労働省の人口動態統計では、中皮腫の死者は95年以降の死者数しか公表されていませんでした。石綿による健康被害の救済対象を医学的に判断する検討会(座長、森永謙二・産業医学研究所部長)に、70年代末からの胸部の中皮腫のデータが提出され、79年以降の死者が明らかになったもの。同資料によると、79年から94年の15年間で、胸膜にできた中皮腫(悪性新生物として登録)の死者は、計2074人。中皮腫で労災認定をうけたのはこの間にわずか83人で、79年から04年までで4%にすぎません。95年以降の胸部中皮腫の死者は計4475人で、腹膜などの中皮腫を含めると、9087人に達します。
 胸膜の中皮腫は79年に62人でしたが、15年後の94年には4倍以上の256人に。95年から04年(647人)の10年間に約2.4倍に急増しています。
 同検討会では、中皮腫はアスベストが原因とみなして、すべてを政府が救済していくことで一致。今後、肺がんや、労災認定病として指定されている良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚などの救済範囲についても検討していくことにしています。

(2005.11.21、赤旗)


共産党近畿ブロックがアスベスト問題で交流会/国、企業責任明確に

 日本共産党衆議院近畿ブロック事務所は11月4日、アスベスト問題近畿学習・交流会を大阪市内で開きました。近畿2府4県の地方議員や大企業で働く労働者ら100人が参加しました。
 報告した吉井英勝衆院議員は、この問題に取り組む姿勢として、@被害の実相を明らかにするA住民健康調査と被害者救済の実現B国とアスベスト企業の責任を明確にする−の3つの柱を提起。政府のアスベスト被害対策の新法案について、国の責任も企業の責任も認めず、救済対象も限定していると批判しました。
 特に国には、危険性を知りながら使用禁止にしなかったことと、軍艦や戦闘機に欠かせない部材を作る軍需産業として国策で石綿産業を興した2つの大きな責任があると指摘しました。企業責任について、石綿の大口ユーザーである大手企業の責任を明確にしていく必要性を語りました。
 参加者は、議会での質問や当局への申し入れで対策を前進させたことや、住民への聞き取りで判明した事実を具体的に紹介しました。
 地元の竜田工業(奈良県斑鳩町)で1960年代に青石綿製品製造に従事していた3人から話を聞いた奈良の宮本次郎県議候補は、「3人とも中皮腫です。『乾いたせきが1年中出る』『気分がいつも晴れない』など深刻な訴えとともに、『なぜこうなったのか説明してほしい』と国や会社への希望が出された」と報告しました。
 石綿を扱う兵庫県の民間大企業の労働者は、「健康不安を訴える声が労働者の間に広がっている。長期の構えで運動体をつくっていくことが必要」とのべました。
 山下よしき元参院議員が閉会あいさつしました。

(2005.11.5赤旗)


石綿 救済に数百億円/政府方針 低水準の国・企業負担

 アスベスト(石綿)が原因で中皮腫や肺がんになり、労災補償の対象外とされていた被害者救済措置について、政府は、遺族一時金や葬祭料などを当面公費で支給し、国と企業負担総額を数百億円規模の低い支給水準にとどめようとしていることがわかりました。11月17日、環境省が日本共産党の吉井英勝衆院議員に明らかにしました。
 政府は、今年度の補正予算で約300億円を計上、来年夏ごろまでに新法にもとづく救済制度スタートを検討しており、遺族への一時金支給額は約260万円前後、葬祭料20万円で調整しています。
 政府は、労災認定外で死亡した労働者の家族や周辺住民には遺族一時金、葬祭料を支給、闘病中の患者には医療費の自己負担分と療養手当の支給を検討しています。現時点での死亡者は1万人弱と推計しており、遺族に支給される総額は約300億円程度。闘病中の被害者に対する救済措置のうち、2007年度以降に支払う治療費などの財源などは、原則として石綿を扱っていた企業に負担を求める方向です。
 救済制度に先立ち、遺族一時金や治療費を支払う基金を05年度内に新設する方針で、給付に必要な財源を国・自治体・原因企業で分担。06年度分の治療費なども公費から支払う方針。闘病中の被害者には、治療費の自己負担分のほか、療養手当として月額10万円程度の支給を検討しています。時効で労災補償を受けられなかった労働者は労災補償に準じた措置を盛り込みます。
 企業負担については、アスベスト使用量に応じて企業に負担を求めるのではなく、労災認定件数をベースに負担を求める方法を検討しています。

■救済対象を広く
 日本共産党の吉井英勝衆院議員(党アスベスト対策チーム責任者代理)の話
 国民の不安の声におされ、政府も早く救済の手を打たざるをえなくなったという点では前進です。しかし、検討されている救済策は、被害補償額が数百億円程度と低く、救済対象も中皮腫・肺がんに狭めるなど、国の責任と製造・販売・使用してきたアスベスト企業の責任があいまいとなっています。
 中皮腫、肺がんだけでなく労災病に指定されている良性石綿胸水とびまん性胸膜肥厚なども救済する必要があります。工場周辺の住民、労働者の家族の健康診断・治療体制をつくっていくことも大事です。被害者の全面的救済、新たな被害の予防に力をつくしていきたい。

 (2005.11.18赤旗)


アスベスト関連の労災申請が増加/良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚

 アスベストとの関連が明らかな疾病として、厚生労働省が2003年9月から新たな労災認定病に指定した「良性石綿胸水」や「びまん性胸膜肥厚」の労災申請が増加していることが11月15日までにわかりました。日本共産党の小池晃参院議員の資料要求に、同省が回答し初めて明らかになりました。
 厚生労働省補償課によると、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚は、9都県で23件(21人)の労災申請がありました。2003年度が計9件、04年度は12件と3件増加。このうち労災認定されたのは10件で、現在も審査処理段階が8件。この病名で労災が認められなかったのは5件でした。
 このふたつの病気は、治療が必要な肺機能障害を引き起こし、中皮腫などの発症にもつながる重大な病気。しかし、まだ広く知られていないため労災申請そのものの数も少なく、政府が検討中のアスベスト健康被害救済新法でも救済対象と明示されていません。
 良性石綿胸水からびまん性胸膜肥厚に悪化したり、中皮腫を発症する場合も。良性石綿胸水の約半数は、呼吸困難などの自覚症状がある一方、自覚症状がなくても石綿胸水になっていることもあります。2つの病気の労災認定は@確定診断が困難な場合が多いA個々の障害の程度がさまざま――ということなどから「具体的な診断基準がない」(同課)状態。厚生労働省の担当部門と専門医の協議で個々のケースの診断と認定をおこなうことになっています。
 アスベスト作業にあたった労働者、家族と製造工場周辺の住民にたいして、中皮腫・肺がんだけでなく、これらの病気の早期発見や定期的な健診・補償の体制をとることが急務になっています。

(2005.11.16赤旗)


アスベスト被害指定医療機関/全国で114カ所だけ/3県はゼロ

 アスベスト(石綿)作業に従事した元労働者に支給される石綿健康管理手帳を持っていても、無料で定期健診をうける指定医療機関があまりに少ない――。こんな実態が11月14日までにわかりました。
 石綿健康管理手帳は、アスベストの製造などに従事し、両肺にアスベストが原因で「不整形陰影」がある場合か、または胸膜肥厚斑(プラーク)がある元労働者に支給されます。無料で年2回の健康診断が受けられます。
 この健康診断は、厚生労働省の指定病院に限定されているため、健診を受けたくても近所にある指定の医療機関で健診が受けられなかったり、指定機関でないと検査が無料になりません。
 同省によると、指定医療機関は岩手、群馬、福井の3県がゼロ。44都道府県でたった114の医療機関しか指定になっていません。
 首都東京では東京労災病院(大田区)だけ。埼玉県も、埼玉社会保険病院の1つだけです。
 アスベスト健康被害者の診療を長年にわたっておこなっている医療機関が、同省の指定医療機関になっていないケースもあり、指定の大幅な拡大を求める声がでています。

 (2005.11.15赤旗)


石綿被害救済広く/吉井議員奈良・王寺町で元工場従業員らと懇談

 日本共産党の吉井英勝衆院議員は11月12日、奈良県王寺町内でアスベスト(石綿)問題についての国会報告をしました。県内のアスベスト製品製造事業所の元従業員や家族など48人が参加し、懇談しました。
 吉井議員は、新たな被害を防止するためにも被害の実相を徹底的に明らかにすることを強調したうえで、8月に発表した共産党の特別措置法案大綱にもふれ、アスベスト由来の疾病はすべて救済すべきだと指摘。救済対象を狭くしようとする政府の動きを批判しました。
 また製造企業にとどまらず、石綿産業を国策として育成し、対策を怠ってきた政府の責任や、使用規制に抵抗した鉄鋼、造船など大口ユーザーの責任についても言及。救済原資を国と企業に求めることには道理があるとのべました。
 かつてアスベスト製造現場で4年ほど勤めた女性は「せきがひどいのでいつもあめをなめたり、水分を補給しないといけない。認定を受けたが、手帳の交付が遅い」と訴え。「パートで1年ちょっと製造工場にいた」という女性は「胸部レントゲンで気がかりなこともある。どんな検査をすればよいか」と質問しました。
 吉井議員はこれらの質問や要望にこたえながら、「腰をすえたとりくみをみなさんと進めていきたい」と結びました。

(2005.11.13赤旗)


アスベストの労災認定に「人員確保」/吉井議員の質問主意書に答弁

 アスベスト(石綿)による健康障害の救済をめぐって労災認定作業の遅れが問題になっているため、政府は必要な人員を確保していくことを明らかにしました。
 日本共産党の吉井英勝衆院議員の質問主意書に対し、政府が答弁書で答えたものです。
 労災の認定作業の遅れに対して厚生労働省は7月26日付で事務処理の迅速化についての通達を各都道府県に出しています。しかし現場では、認定作業の遅れが依然として問題になっていることから、吉井議員は「通達に実効性を持たせるためには、人員の増加などの体制の強化が不可欠ではないか」と質問していました。
 政府は「厳しい行財政事情を踏まえつつも、必要な人員の確保を図ってまいりたい」と答えています。
 環境省がアスベストによる中皮腫や肺がんの発症者数の推計値を出していると報道されていることについて、主意書ではその算定根拠の明示を求めました。答弁書で政府は「推計は行っていない」と答えています。政府が公約してきたとおり「すきまなく被害者を救済する」ためには、被害者の実情を正確につかむことが求められています。

(2005.11.8赤旗)

>>質問主意書本文
>>答弁書本文


石綿肺がん・労災請求再審理開く/労働保険審査会代理人、救済訴える

 石綿(アスベスト)が原因で肺がんになったとして労災を認めるよう請求している故高村一雄さんの再審理が11月4日、労働保険審査会(東京・港区)で行われました。高村さんは今年5月に亡くなったため、代理人が陳述。審理は公開されました。
 高村さんは1999年、石綿肺がんと診断され新宿労働基準監督署へ休業補償給付請求をし、2002年に不支給決定となりました。不服申し立てとして、同年東京労働者災害補償保険審査官へ審査請求しましたが、2004年に棄却。同年上級機関にあたる労働保険審査会に再審査を請求しました。
 代理人は岩田輝幸(東京土建杉並支部・書記次長)、三宅一也(同常任中央執行委員)、斎藤洋太郎(職業性疾患・疫学リサーチセンター)の各氏。
 高村さんの場合、この間の請求で認定基準の作業年数は認められましたが、医学的基準は認定されませんでした。
 この点について斎藤氏は「高村さんの担当専門医は石綿が原因でできる胸膜肥厚斑を認めていた。東京労災補償保険審査官は石綿肺と胸膜肥厚斑の両方とも所見がないと判断し労災を棄却した。しかし、高村さんの死後、解剖した結果、胸膜肥厚斑が肉眼で認められた」として、監督署と審査官の決定に反論しました。
 三宅氏は、監督署ではじん肺と石綿がんの基準が混乱し、手続きが簡単に進まないと述べました。
 岩田氏は、高村さんが結果を待ちながら亡くなったことを話し、請求者は亡くなるか病気が再発しなければ救済されない状況を指摘しました。
 厚生労働省は医学的基準として@石綿肺が認められることA胸膜肥厚斑または石綿小体等の存在が認められること−−のいずれかが確認されれば労災補償を受けることができるとしています。

(2005.11.5赤旗)


アスベスト被害対策は国と企業の責任で/各地の運動交流・実効ある新法求める/吉井議員が報告

 「工場の中は白く、雪の日のようだった」「一家4人のうち3人までが肺疾患で死亡」「手づかみでアスベストをかき回す仕事だった」―。11月3日、東京都内で開かれた「実効ある石綿新法をめざす相談会」では、こんな報告が相次ぎました。

■全労連など
 全国労働組合総連合、全日本民主医療機関連合会、働くもののいのちと健康を守る全国センターが主催。全国各地から労組、医療関係者など70人が集まり活発に意見交換しました。
 各団体が取り組んできた被害調査などの運動を交流し、実効ある石綿新法の制定にむけた運動の方向を明らかにするのが目的です。
 政府はアスベスト被害対策への新法を準備していますが、この問題での政府、企業の責任を明確に認めておらず、補償の対象も狭められるなど大きな問題があります。
 全国センターの今中正夫事務局長は、「補償問題だけでなく、暴露者の健康管理、今後の建物の補修、解体などでの安全対策など、総合的な対策が必要だが、国の方向は被害者対策だけにとどめようとするものだ」と批判。「国民的課題としてすべての被害者救済と総合的対策を国と企業の責任で行うよう運動を強めよう」と呼びかけました。
 相談会では、各地のこの間の取り組みから、被害者救済や新法の制定に向けて問題点や課題が出されました。
 国労の代表は、「旧国鉄時代はSL、保冷車、寝台車の屋根裏の断熱材など至るところにアスベストが使われていた。これからどれだけ被害がでるか分からない中で、OBが地方でも健康診断を受け、きちんと診断がされるような体制を早急につくるべき」と訴え。
 香川医療生協の代表は、屋島地区で、この間被害者の掘り起こし活動に取り組んだことを報告。3回で計68人を訪問。このうちすでに死亡していた21人のうち、13人が肺がん、中皮腫などで亡くなっていたことが分かりました。また遺族の家族検診でも「アスベスト肺」特有の症状があったことを紹介し、「新法ではCTでの家族検診を受けられるようにすべきだ」と訴えました。
 兵庫県の尼崎医療生協の代表は「尼崎は中皮腫の死者が全国の5.2倍、クボタ工場の500メートル以内では9倍以上にもなる。過去に住んでいた人も含めて被害者が安心できるよう、全国どこでも希望者は無料で検診を受けられるように、加害企業と国の責任で制度を確立すべき」と話しました。

 日本共産党の吉井英勝衆院議員(党アスベスト対策チーム責任者代理)が国会情勢を報告。アスベスト産業が戦前から国策で戦争と結んで発展してきた事実を紹介し、「まさにおおもとに国の責任がある。しかし、対象を肺がんと中皮腫のみに狭めるなどすき間だらけのまま、政府は新法を次の通常国会で来年の3月までには片を付けてしまおうという姿勢がみえる。今後も国とアスベスト企業の責任を明らかにし、被害者の全面的救済、新たな被害の予防に腰を据えて全力で取り組んでいきたい」と決意をのべました。

 相談会では、在任中、埼玉県内でアスベスト使用企業の被害状況を調べた元労働基準監督官の井上浩氏が講演しました。

(2005.11.4赤旗)


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