建設労働者の石綿肺がん死・年8千人に/専門医試算

 建設労働者の石綿被害者に関する専門医の試算によると、現在実態がつかまれていない石綿肺がんの死亡者は少なくとも年間八千人と推定されることがわかりました。判明している中皮腫死亡者の10倍にもなる数です。石綿含有建材の規制遅れが深刻な結果をもたらしており、見落とされている多数の肺がん被害者の救済に迅速で誠実な政府の対応が求められています。

 石綿肺がんについては死亡統計がなく、NPO法人「職業性疾患・疫学リサーチセンター」理事長の海老原勇医師が推計値を算定しました。
 海老原医師が、建設関係の労働組合員7317人の死亡原因を調べたところ肺がんについては一般人より、1.22倍高いことがわかりました。建設作業者の肺がんは、ほとんどのケースで石綿を吸いこんだ証拠の胸膜肥厚斑が認められるため、肺がんを石綿肺がんとみなして計算しました。
 男性全体の肺がん死亡者数は03年の統計で41634人で、人口10万人当たりの死亡率は66.8人。建設作業者は退職者を含めると約1千万人なので、6680人が死亡している計算です。この数字を1.22倍した8150人が石綿肺がんの死亡者数と推計しました。
 中皮腫死亡者は年間878人(03年)。肺がん死亡者はこれよりけた違いに多く、石綿肺がん被害者の多数が見落とされているのが現状です。
 海老原医師の報告(『労働の科学』昨年5月)によると、建設作業者の肺がん77人を検討したところ、このうち7割を超える57人(74%)が石綿肺がんの特徴を示していました。しかし、この57人全部が、石綿肺がんと診断されたことはなく、職歴も聞かれず、喫煙のみを詳細に聞かれただけでした。
 海老原医師は「建設作業者の中に石綿関連肺がん例が多発しているにもかかわらず、きちんと診断されないまま被害のみが進行しているのが実態」と指摘しています。
 石綿被害者の労災による救済に取り組んできた神奈川県建設労連の佐瀬新意(しんい)・書記次長は「私たちの取り組みでも中皮腫より石綿肺がんの認定数がはるかに多い。マスコミの報道をみていると診断のつきやすい中皮腫ばかりが注目されるが、その半面はるかに多数の石綿肺がんが見落とされている。石綿関連企業も中皮腫は公表しても肺がんの死亡例は公表してない。これが現状をよく示している」と指摘しています。

(2005.9.26赤旗)


『アスベスト問題』住民・労働者の不安・要求にこたえ、調査・対策もとめるとりくみを
(「議会と自治体」2005年9月号掲載)


党国会議員団アスベスト対策チーム責任者代理 吉井英勝

 本稿は、党大阪府委員会が七月二十二日に開いた「アスベスト問題緊急学習・交流会」
での報告をもとに、その後の情勢の変化をふまえ、整理・加筆したものです。

 六月末から七月にかけて、石綿(アスベスト)製品を製造していたメーカー(クボタニチアスなど)から、製造工場労働者および工場周辺住民に、肺がんや中皮種(がんの一種)による死亡事例など、深刻な健康被害が出ている実態が相次いで発表されました。工
場から飛散したアスベスト(一〜二マイクロメートル)の吸引が原因と考えられており、労働者とその家族、住民の不安が大きく高まっています。また、すでに亡くなられた方の遺族や、闘病中の方がたから、労災認定や救済を求める声も出されています。
 日本共産党国会議員団は、クボタやニチアスの本社を訪れ緊急に調査をおこなうとともに、七月十一日には党国会議員団としてアスベスト問題対策チーム(責任者 市田忠義書記局長)の第一回対策会議を開催するなど、とりくみをつよめてきました。
 十四日には小泉純一郎首相にたいし、政府による緊急全国実態調査の実施と調査結果の公表、石綿製品の製造・使用の全面禁止、健康診断と労災認定の抜本見直しをふくむ被害者救済、学校等に使われている石綿の完全撤去、解体工事等における被害発生を防止する対策など、七項目の「アスベスト(石綿)対策に関する緊急申し入れ」(別掲)をおこないました。
 いま、被害者、住民の不安の声にこたえるために、どのようなとりくみが必要か、この
間の調査結果をふまえ、提起したいと思います。

 ようやくはじまった被害実態の公表

 早くから指摘されてきた危険性
 もともとアスベスト問題は、早くからがんとの関係が知られており、じん肺法(一九六〇年)、大気汚染防止法(六八年)、七一年九月の特定化学物質障害予防規則(七二年)のなかで、非常に甘い基準でしたが、対策が必要とされていました。七二年には、ILO(国際労働機関)で、アスベストによる職業がんが公認されるなど、アスベストの被害はずっと前から指摘されてきました。
 これまでにも、被害者とその家族、医療関係者などによって、対策と補償を求める運動がとりくまれており、党国会議員団も、三十年以上前(七二年六月七日、山原健二郎・当時衆院議員、科学技術振興対策特別委員会)から、一貫して国政の重要問題として取り上げ、労働者の健康被害や環境対策について、国会で追及してきました。

 隠しきれなくなって公表
 この間、急にアスベスト問題が出てきたような感じを受けるのはなぜかというと、背景の一つに、ILO一六二号条約(石綿の使用における安全に関する条約。八六年採択、八九年発効)の批准について、今国会で六月末から審議がおこなれることになったことがあります。
 日本政府は、アスベスト使用禁止の国内法の整備を怠り、国際条約ができてから十九年
も批准してこなかったわけですが、この国会審議を前に、クボタやニチアスなどが、従来の秘密扱いでなく、使用状況や被害実態について、みずから公表する方向に転換したわけです。
 もちろん、この間の被害者・遺族のみなさんのねばりづよい運動が、こうした転換の背景にあることは、あきらかです。今年春には、石綿製品の生産をおこなっていたクボタの工場周辺の住民で被害を受けた方がテレビに登場されるなどして問題が表面化し、隠しきれなくなったことも、公表にいたった大きな要因の一つでした。
 私たちは、七月四日にクボタ本社(大阪)に、六日にニチアス本社(東京)に調査にいきました。ニチアスでは、私たちの事前の資料要求にもとづき、アスベストによる死者百四十一人の労災認定リストや工場の生産工程図面も資料として出されましたが、クボタでは出されませんでした。
 いま、石綿製品のメーカー(現在は生産していない企業をふくむ)では、被害状況を公表するなど、一定の対応をとらざるをえなくなっています。しかし、その対応は事業者ごとにまちまちであり、問題の全体像をあきらかにする点で、必ずしも誠実に対応しているとはいえない、という状況です。
 ですから、ひきつづき、事業者にたいし、全容をあきらかにさせるたたかいは、重要な課題です。

被害と使用状況の実相、企業と行政の重大な責任

 家族、周辺住民まで広範囲の被害
 アスベストの被害実態は、日々新しい状況(拡大)が報じられていますが、非常に広範囲なものであることがあきらかになっています。
 この間、私たちは、世界アスベスト東京会議(〇四年)の報告や、被害者の声、労働組合のとりくみ、各省庁の報告、現地調査などから、その実態をつかんできました。
 まず、クボタやニチアスのような、石綿製品の製造や石綿吹きつけなど工事段階での労災死亡は、五百三十一人(七月二九日時点)になっています。企業と行政の安全対策の遅
れと不備があったことはあきらかで、たとえば、アスベストの吹き付け作業は、一九七五年に原則禁止になっていますが、石綿の切断作業時の呼吸用の防護具、保護衣の使用が義
務づけられたのは、九五年からです。
 ニチアスでは、百四十一人の死者のうち、製造工程で働いていた人のほかに、三十八人
が現場のアスベスト吹き付け作業に携わっていたことがあきらかにされています。また、吹き付けアスベストのあるところで、働いていた人にも被害が出ていることや、研究所員、営業マンにも被害者が出ていることが、メーカーの資料であきらかされています。
 船員や造船関係の職場には、多くのアスベストが使用されていますが、日本郵船の船員
の死亡に労災認定がだされ、造船会社で六一人も労災死した方が出ています。
 それから、石綿の付着した衣服に接していた労働者の家族、石綿製品製造工場の周辺住民への被害もあきらかになってきており、クボタ神崎工場周辺では、三十一人の住民がアスベストが主な原因とされている中皮種で死亡しています。
 また、アスベスト鉱山の問題もあり、カナダや南アフリカでは被害実例が報告されています。日本では、六十九のアスベスト鉱山があった(いずれもすでに閉山)とされていますが、その後の管理などがどうなっているのか、所管する経済産業省は、まったく実態をつかんでいません。

 中皮種死者六千人以上、労災認定はごく一部
 他方で、人口動態調査によると、中皮腫による死者は政府が統計をとりはじめた一九九
五年以降の九年間で、六千人を超え、近年、増加傾向にあります(図1)。これにたいし、同期間に「アスベストによる中皮腫」と労災認定を受けているのは、わずか二百八十四人にすぎません。アスベストが原因と国や企業に認められないまま死亡した人が、相当数にのぼっていることが明らかになっています。
 なお、アスベストによる肺がん・中皮種の労災補償状況は表1のとおりですが、厚生労働省は、七〇年代の数値をなかなか出しません。七〇年代に厚労省がアスベストにかんして労災死を認定しているとすれば、そのときから、すでにアスベストは非常に危険な物質で対策が必要だとわかっていたことになります。ですから、七〇年代のデータを出さないのです。このデータを公式に出させること自体が、一つの責任追及になっています。

 使用実態と安全対策
 財務省や経済産業省などの資料によると、一九三〇年から二〇〇三年までに輸入されたアスベストは約九百八十七万トン、国内鉱山からの生産は約三十七万トンで、計千二十四万トンのアスベストが使われたと考えられています。約九割は、天井・壁材・スレート瓦
などの建築材に使われていますが、そのほか、工業用から電気製品、日用品まで、約三千
種の製品に使われています。
 クボタやニチアスの資料によると、石綿を一五%(重量比)ふくんだ水道管(石綿管)や、屋根や壁に使用する石綿ボード(石綿五〜一〇%含有)、パッキン(四〇〜九〇%含有)などがつくられていたことがわかります。
 今後、被害拡大を防止するためにも、石綿がどこにどの程度使われているかを正確に把
握することは、不可欠の課題です。
 安全対策という面では、企業のとりくみ、行政の指導が非常になおざりであったことがあきらかになってきています。
 石綿濃度の基準値(国際基準に照らして不十分なものであったが)は、七一年の特定化
学物質等障害予防規則施行令、七六年の作業環境測定基準施行令で定められていました。
ところが、クボタであきらかになった実態は、基準はあっても、石綿の塵がもうもうと立ちこめる作業場について、七六年までは濃度測定がおこなわれていませんでした。また、工場敷地の境界での濃度測定は、八八年までおこなわれていませんでした。
 しかし、こうした状況について、行政による指導は行われていませんでした。この背景には、メーカが集まった石綿協会の要請とともに、鉄鋼、造船、石油化学、自動車、ゼネコンなど大口ユーザの利益や要求を優先するという政府の姿勢があったことはあきらかであり、その責任は重大です。政府は、ここにきて、過去の政府の取組みを「検証する」としています。しかし、石綿肺癌・中皮腫の症例は海外では六十年代から、国内でも六十年代末に紹介され政府も確認していました。それは当時の通達類によっても明白です。問題は、石綿による深刻な被害がでることを知りながら、石綿使用禁止措置を遅らせたことです。ここに政府の重大な責任があります。 
 ニチアスの提出資料から、石綿使用量と石綿疾患死亡者の推移を見ると、石綿の使用を
増やした七十年代から労災認定者の死亡が急増し、八八年のピークを過ぎて使用を大きく
減らした九〇年代以降も死亡者が増えています。それを別の角度から見ると、アスベスト
の使用がなくなっても、十五年とか二十年たって死亡者が増えるという関係があるように
見えます。これは、アスベストの潜伏期が、肺がんで十年以上、中皮種で三十〜四十年と
いわれていることに合致するものです。
 また、勤続一、二年の人からも死亡者が出ていますが、勤続年数が長くなるとともに被害が増え、勤続三十五年の方の被害がピークになっています。
 現在でも少なくとも五十カ所でアスベスト製品の製造・加工がおこなわれていることがあきらかになっています(「毎日」調査、八月三日付)が、廃止された工場の実態をふくめ、その全体像をあきらかにさせる必要があります。
 今後は、建物の解体などで、建設労働者、周辺住民への被害拡大が予測されます。アス
ベストが使われているものをふくめ、古い建築物の解体は、二〇二〇年から四〇年までが
ピークで、年間十万トン前後のアスベストが排出されるという国のアスベスト飛散防止対策検討会の報告(九七年)もあります。
 これまでも、吹き付けアスベストの撤去工事などのさいに、十分な保護策がとられていなかった事例や、阪神・淡路大震災のときにも問題になったように、石綿使用実態の把握や対策がないまま撤去工事がおこなわれた事例もあきらかになっています。
 それだけに、これまでの石綿使用と被害の実相をあきらかにさせることは、新しい被害の発生をくいとめる対策ために不可欠の課題です。


 国会、地方議員団の連携したとりくみを


 以上のような状況のもとで、今後、国会議員団と地方議員団の連携した調査やとりくみが重要になってきます。そのさいに、発病までの期間が長いというアスベストの性質上からも、当面の活動とともに、「腰をすえた中長期のとりくみが大切」(市田書記局長の記者会見、七月二十六日)という姿勢で臨むことが求められます。

 地域の実態つかみ国に対応を迫る
 この間のやりとりから考えて、行政だけに任せておいて、十分な調査がおこなわれるかどうかは疑問です。各地域で、石綿関連工場の有無、製品の使用状況などについて、出される住民の声を聞き、独自の調査もおこないながら、対応を自治体や国に迫っていくというやり方が大切になると考えます。
 たとえば、尼崎市議団のみなさんが、クボタ工場周辺の被害者の方と懇談し、”工場から何メートルの距離に住んでいた人に被害が出ている”などというような、具体的な資料をつくって、行政やクボタに綿密な調査をおこなうよう迫っていく、などといったとりくみです。
 大阪では、党の阪南地区委員会の地域では、経済産業省の発表では石綿工場が十一社、十一人が死亡、十五人が労災認定を受けているとされていました。しかし、実際には、八十三社あり、そのほとんどが零細企業で、その製品が造船所や製鉄所に持ち込まれていました。その職場環境は、劣悪で、アスベストの塵が舞うなかで作業がおこなわれていたのです。こうした地域では、労働者と地域住民の緊急の健康調査が必要です。
 この点で緊急に解決が迫られているのは、アスベスト関係企業と国や県などの公費負担
で住民検診を実現することです。
 〔この報告会のあと〕熊本県松橋(まつばせ)町へ調査に行きました。ここでは、八八年から九三年にかけて、熊本県が「松橋町胸膜肥厚対策協議会」をつくって、県が二分の一の費用補助を行って約一万人の住民検診が実施されました。アスベスト鉱山も麻生石綿株式会社の工場もあった地域ですが、工場周辺の人々のX線撮影で見つかった異常をさらにCTにかけて調べて、九百三十八人に胸膜肥厚斑が見つかりました。さらに中皮腫で亡くなった方や、中皮腫の疑いで手術を受けた人もおられます。

 私たち日本共産党の強みは、全国の自治体に議員がいて、党支部があることです。その
力を発揮して、地域の実態をつかんで、自治体交渉や政府交渉をすすめることが大切です
。そのとりくみのなかから、被害補償をふくめた、アスベスト問題の全面的な対策をすすめる仕組みをつくるか、公害健康被害補償制度のなかで、アスベストによる被害者への救済を充実させるのか、方向性が出てくると考えます。
 自治体は、学校をふくめた施設建設や上下水道事業など、さまざまな公共工事でアスベ
ストをふくむ製品を購入・使用しています。たとえば、クボタや秩父セメントなどから石綿管を何本購入し、どこに使ったのか、その石綿含有率はいかほどかなど、調査すればあきらかにできるはずです。これは、自治体とクボタなど企業の両方にたいして、調査し、公表させ、直ぐに除去するか、建物の解体時に除去するかの判断も含めて住民の安全を守る対策にいかしていくことができる取組みです。
 そして、そうした事実を積み上げていけば、国の責任できちんとした調査をするように迫力を持って、迫っていくことができるのです。
 日本共産党は、国会をふくめ、七〇年以降、各地でアスベスト問題にとりくんできた経験をもっています。たとえば、学校のアスベストが問題になった一九八七年には、全国でいっせいにこの問題をとりあげています。しかし、当時は、対象品目が少なくて、いまだに多くの学校で石綿をふくんだ建材が使用されています。
 また、大阪の泉南市では、八七年当時、石綿を扱う零細企業が二十八社ありましたが、廃業・倒産が増えるなかで、金能寺川に三百トンの石綿を捨てるという事件がおこり、当時、日本共産党市議が議会で追及をおこなっています。しかし、こうした中小零細企業の実態や過去の事例について経済産業省に報告を求めても何も掴んでいません。これでは国の責任で疫学調査を実施しようという発想がでてこないのです。あらためてこれまでの党議員団のとりくみを整理して国に対策を迫ることも、運動をより有効にすすめていくうえで、必要だろうと思います。

 地方議員のみなさんが、党支部や労働組合、民主的医療機関とも連携して、健康被害へ
の生活相談、救済活動を全国各地で取り組んでいます。深刻で具体的な生活相談も増えており、それにこたえるとりくみは、当面の緊急課題として大切です。
 たとえば、和歌山の住友金属の職場党支部では、アスベストの使用と安全性について懸
念があり、ビラもつくって緊急対策を求める運動をすすめています。職場のなかから声を上げていくことは大切です。
 日立造船桜島工場(大阪市)で働いていた労働者が中皮腫で亡くなっています。三菱長
崎造船の塵肺訴訟を闘っている退職者は「原告の七十六%が石綿肺の予備軍だ」と石綿問
題で闘ってきました。しかし少なくない退職者の間では、職場に石綿が使われていたこと自体知らないという場合もあります。そうした人も、相談活動をはじめ、きちんと救済されるようにしなければなりません。
 健康相談などは、保健所などではじまっていますが、当面、行政による「相談窓口」を充実させることも大切です。その時、健康診断や治療の費用負担の問題でも対策が必要で
す。労働者の場合、労災認定されれば医療費は補償されますが、周辺住民については、現
在、公的医療費負担はありません。公費負担による住民検診の実現は、大気汚染公害とアスベストでは七二年の山原質問からですが、わが党が一貫して取り組んできた大事な柱の一つです。
 これらのほかにも、さまざまな課題がありますが、議員団の生活相談や、居住支部、職場支部の活動のなかで連携を強め、とりくんでいくことが大事です。
     ◇      ◇
 六〇年代後半から七〇年代には、日本共産党は公害反対闘争の先頭に立ち、住民の命と
健康を守るために、企業と行政の責任追及、生活相談などにとりくみました。そのことが、党への信頼を深め、党の躍進につながりました。
 研究者の発表によれば、今後四十年間に、十万人のアスベストによる死者が生まれると
の推定もあります。アスベスト問題は、長期にわたるとりくみになります。国会議員団のチームも長期を見通して必要な体制をとって活動しています。腰をすえて、被害者やご家族の方などと手を携えて奮闘しようではありませんか。
(よしい・ひでかつ)

日本共産党国会議員団のアスベスト対策緊急申し入れ(要求項目のみ)
七月十四日

 【緊急要求事項】
 一、石綿に関する輸入・製造・使用・在庫、除去後の石綿廃棄物等の緊急全国実態調査
を厳密に実施し、公表すること。
 二、石綿の製造・使用等の全面禁止、在庫回収、安全除去などの被害防止対策、被災労
働者等の被害者救済の徹底を早急に図ること。
 三、石綿に関する製造・使用事業所等の関連企業、吹きつけおよび含有製品使用事業所、事業所周辺住民などの健康診断調査を原因企業と国の費用負担で緊急に実施すること。
地方自治体と協力して「相談窓口」を設置すること。
 四、石綿の労災認定を抜本的に見直すとともに、被害労働者に家族・周辺住民も含めた
石綿に関するすべての健康被害者を救済する新たな救済制度(公害健康被害補償法の適用も含む)を早急に実現すること。
 五、石綿使用施設の解体、解撤作業等による作業者、施設関係者、周辺住民の安全など、被害発生防止に万全の対策を実施すること。
 六、全国の学校施設における石綿製品の使用実態の再調査を実施し、完全撤去を徹底すること。
 七、米軍基地等での石綿使用の実態把握と被害防止・被害者救済対策を米国政府に求めること。

[アスベストQ&A]
(「しんぶん赤旗」七月二十九日付から再構成)
 Q1 アスベストってどんなもの?
 A 石綿と呼ばれる繊維状の鉱物です。蛇紋岩(じゃもんがん)系と角閃石(かくせんせき)系に大別され、角閃石系の青石綿、茶石綿はより毒性が強いことがわかっています。飛散すると空気中にただよい、目に見えません。

 Q2 アスベストでどんな病気に?
 A 発がん性があり、吸い込むと、肺の機能をそこなう石綿肺(じん肺)や、長い潜伏期後に発病する肺がんと胸膜、腹膜からのがんである悪性の中皮腫などになるおそれがあります。吸い込んだアスベストが肺や胸膜などの細胞に突き刺さり、がんを発生させるとされています。
 吸い込んだ量が多いほど、発病の危険性は高くなります。しかし、少ないからといって
安心はできません。旧労働省の専門家会議がまとめた報告書(一九七八年九月)は「中皮
腫は少量でも発生する可能性がある」と指摘しています。
 アスベストを吸い込んだ可能性の高い工場周辺の住民や、建設労働者やその家族などは定期的な健康診断で肺がんなどを早期につかみ、初期治療することが大事と専門医は指摘しています。
 たばこによる肺がんなどとされてきた死者も患者の職歴やアスベスト特有の胸膜肥厚斑
(ひこうはん)を調べることも必要です。

 Q2 どんなところに使われている?
 A アスベストは熱に強く、燃えにくい、電気を通さない、薬品に強く腐食しない、曲げる力や引っ張りにも強い、安価、といった特徴があります。このため、「奇跡の鉱物」といわれ、工業用から電気製品、日用品にいたるまで、約三千種にのぼる広い範囲で使われました。九割は、天井・壁材・スレート瓦など建築材として使われています。

 Q3 日本政府の対応は?
 A アスベストが「発がん物質」と米国で指摘されたのは一九三五年。六四年には米国の「ニューヨーク科学アカデミー」の国際会議で、肺がん、中皮腫を発生させるとする警告が「勧告」として出されました。七二年には国際機関である世界保健機関(WHО)や、国際労働機関(ILО)がそれぞれ危険性を指摘しました。
 八〇年代にはすでにヨーロッパ諸国で相次いで全面使用禁止になりました。米国でも八
九年からアスベストの生産・輸入を段階的に規制しています。
 しかし、日本では六〇年代の高度成長期から建物や製造現場でアスベストが大量に使われ、七〇年代から九〇年代初めにかけて、輸入がピークになっています。
 日本政府は、七一年にアスベスト製造加工工場での吸引防止策などをもりこんだ特定化
学物質等障害予防規則をつくりましたが、これは工場内だけ。七二年には、旧環境庁も委託調査で工場周辺住民の健康被害を認識していましたが、八九年まで排出基準をつくりませんでした。やっと七五年になって、アスベスト吹きつけを禁止しました。しかし、すでに使われたアスベストの撤去はおこないませんでした。
 九五年になって毒性の強い青・茶石綿を製造禁止にしましたが、これも回収はおこなわれていません。政府がアスベストを原則禁止にしたのは二〇〇四年になってからです。それでも「代替品のないもの」は除かれ、完全禁止は〇八年まで先送りにされています。
 とくに建材では、ことし三月末時点でも、繊維強化セメント板七万七千枚、屋根用化粧スレート九千平方メートル相当などの在庫があります。二〇〇四年十月以前に製造したものは経過措置として販売が認められています。



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