日本共産党の「アスベスト(石綿)対策特別措置法案大綱」

日本共産党は2005年8月31日に「アスベスト(石綿)対策特別措置法案大綱」を発表しました。全文は次のとおりです。


 政府は8月26日、アスベスト(石綿)問題に関する関係閣僚会議を開き、石綿による健康被害に対応するために、特別立法で救済する方針を決定しました。決定内容は、来年の通常国会で新法を制定する、2008年としている石綿全面禁止時期の前倒しを検討するなどとしています。しかし、政府の姿勢は、「関係省庁の十分な連携が図られたとはいえず、反省の余地がある」としながら、具体的な行政責任を明確には認めず、「今後とも精査する必要がある」にとどまっています。また、新法による救済内容も、補償基準や範囲、財源などが明確になっていないことから、患者や家族の間には不安の声が上がるとともに、「総選挙対策では」との批判もでています。

 石綿の健康被害は、この間の被害実態の公表や国会質問などから、安全対策も不十分なまま大量の石綿の製造と使用を続けてきた企業と、危険性を認識しながら長期にわたって使用を容認してきた政府の責任がますます明確になってきています。日本共産党は、その政府と関係企業の責任と費用負担で、すべての健康被害者等の保護・救済、早急な石綿の全面禁止、今後の健康被害拡大の防止対策などをはかる法案の大綱を緊急に提案します。

 
1、石綿によるすべての健康被害者等の保護、救済を目的とした法案。

 石綿の製造・輸入・販売・使用等に伴って生じたすべての健康被害者等に対する補償並びに被害者の健康管理に必要な事業及び石綿除去等に伴う健康被害を予防するために必要な事業について、国及び原因企業等(製造・輸入・販売・使用・元請等)の責任と費用負担で実施することで、健康被害者等を迅速に保護し、石綿による健康被害の救済をはかるものです。

2、健康被害の療養補償等は労災保険及び公害健康被害補償の水準に。

 石綿による健康被害者に対する補償は、労災保険及び公害健康被害補償の水準として、(1)療養給付及び療養費、(2)休業補償、(3)障害・損害補償、(4)遺族補償等、(5)児童・介護補償等を給付します。

3、健康診断や治療体制の整備などの石綿健康福祉予防事業を実施。

 政府は、石綿の製造・輸入・販売・使用等が行われた事業場及び工場の従事者及びその家族、周辺住民の健康診断を行い、石綿による健康被害者に健康管理手帳を交付し、継続的な健康管理の確保を図ることにします。また、政府は、健康被害者の健康を回復させ、その健康を保持させ、及び増進させる等の福祉を増進し、並びに健康被害を予防するために必要な診断・治療体制の整備をおこないます。さらに、政府は、石綿による健康被害を予防するため「相談窓口」を設置し、必要な情報を提供します。

4、早急な全面禁止、建築物解体への助成及び万全な曝露防止対策を実施。

 政府は、石綿の新規の製造・輸入・販売・使用等を早急に全面禁止し、石綿含有製品及び在庫品を回収します。なお、廃鉱山、埋立地等の安全の確認と対策を講じます。また、政府は、石綿含有建築物等の解体事業に伴う健康被害の予防に関する計画の作成、健康相談、健康診査、予防器具等の整備に対する助成措置を図ります。さらに、政府は、廃石綿の排出・保管・廃棄等を把握し、適正な処理をはかります。なお、震災等による石綿含有災害廃棄物の適正処理計画を作成します。これらを実効あるものにするために、政府は、製造・使用者等に自らの製造量、使用箇所等の公表を義務付け、石綿含有建築物解体等の現場への報告の聴取、立入検査、改善措置、情報の公表を行います。

5、健康被害者救済は製造・使用等原因企業及び国の責任と費用負担で。

 政府は、補償給付の支給、並びに健康福祉予防事業及び健康被害予防事業に要する費用について、石綿の製造・輸入・販売・使用・元請等を行った健康被害原因企業の納付金と国庫補助金を充てることにします。また、政府は、石綿の製造・輸入・販売・使用・元請等を行った事業場及び工場の設置者から、健康被害賦課金を徴収することにします。ただし、石綿の製造・使用等を行った中小・零細企業、及び中小・零細な下請企業については、徴収につき配慮し、適切な支援措置をはかります。

6、健康被害を生じている従事者(死亡者も含む)及び家族、周辺住民を認定。

 政府は、石綿の製造・輸入・販売・使用等が行われた事業場及び工場に、一定期間、従事した者及びその家族、周辺に居住した者のうち、石綿による健康被害が生じている者について、健康被害の認定を行い、救済します。なお、石綿による健康被害の特性を考慮して、かつて石綿による健康被害で死亡した従事者及びその家族、周辺住民についても同様に救済することにします。そのために政府は、健康被害認定審査会を置き、健康被害の認定業務を行います。健康被害者は、健康被害の認定業務につき、不服を申し立てることができます。

7、立入調査及び情報公開などで石綿曝露防止対策を徹底。

 政府は、石綿の製造・輸入・販売・使用等が行われた事業場及び工場等への必要な報告の聴取、立入調査、改善措置、情報の公表を行う。また、政府は、石綿の製造・使用等の事業場及び工場(跡地を含む)の濃度、及び周辺地域等の濃度の実測調査、並びに石綿の製造・使用等による健康被害に関する必要な調査研究を行い、石綿曝露防止等のための対策を徹底します。


主張 アスベスト被害/犠牲広げた行政の責任は重い


 政府は石綿(アスベスト)問題に関する関係閣僚会議で、公共施設などへの吹き付けアスベスト使用の実態調査をはじめ当面の対応策を決めました。しかし、労働災害の補償を受けずに死亡した労働者と家族、工場の周辺住民の被害への対策を先送りするなど、不十分な中身です。
 石綿被害が社会問題になりながら、政府が抜本的な対策をとらなかったため底知れない被害を招きました。徹底した実態調査と救済、被害防止の対策が急務です。

■立ち遅れた安全対策

 石綿の粉じんを吸い込めば、肺がんや中皮腫(ちゅうひしゅ=胸膜、腹膜にできる悪性のがん)などを発症することは早くから知られていました。64年にはアメリカのニューヨーク科学アカデミーの国際会議で、肺がん、中皮腫の発症を警告する「勧告」が出されました。72年には、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)がそれぞれ発がん性を指摘していました。
 1972年、日本共産党の故山原健二郎衆院議員が工場での肺がん多発の実態を示して対策を求めた際、旧厚生省は工場の周辺住民の被害についても可能性を認めていました。
 にもかかわらず、75年に石綿吹き付け作業を原則禁止としましたが、濃度の低い吹き付けは認めました。粉じんの出る切断作業の際、呼吸用の保護具、保護衣の使用は、九五年まで義務付けませんでした。
 環境庁も73年に周辺住民の被害の可能性を認識し、80年には周辺への石綿の飛散防止対策など求める研究班の報告書を出しました。しかし、家族や住民への被害防止や健康診断などの対策はとりませんでした。大気汚染防止法改正で石綿排出を規制したのも八九年からです。
 石綿の有害性を認識しながら大量使用を認めてきた責任は重大です。総計990万トンを輸入し、使用しています。欧州各国では1983年から90年代はじめにかけて使用禁止が相次ぎました。日本が毒性の強い青石綿、茶石綿を禁止したのは九五年で、白石綿は2004年10月の原則禁止まで使用を認め、08年全面禁止の前倒しも未定です。
 国民の健康より業界の都合を優先したのではないか、という疑問が出るのも当然です。政府も「決定的な失敗だった」(西博義厚生労働副大臣)と認めたように、「失敗」の原因と責任を究明すべきです。
 石綿を吹き付けた建築物の老朽化による解体や改修は、これからピークを迎えます。
 もっとも危険にさらされるのは建設現場で働く人たちです。安全対策には多額の費用と手間がかかります。7月から実施された解体作業時の被害の予防規則の徹底が重要です。そのため小規模業者には公的な支援を検討することも必要です。
 中皮腫による死者は、今後40年間で10万人にのぼると予測されています。政府が抜本的な対策をとらなければ、今後数十年にわたり被害が拡大することになりかねません。

■国民の願いにこたえ

 日本共産党は政府への緊急申し入れで、石綿の使用・在庫など全国実態調査と石綿の全面禁止、安全除去と被害者救済の徹底、周辺住民などの健康診断調査の緊急実施、労災認定の抜本見直しと新たな救済制度の実現、石綿使用施設の解体などの被害発生防止、学校施設の使用実態の再調査と完全撤去など求めました。
 石綿被害に不安を強める労働者と家族、周辺住民の願いにこたえ腰をすえた対策を急いでとるべきです。

(2005.8.4赤旗)


熊本・宇城(うき)で吉井議員調査/石綿の不安 口々に/“どこに相談したら”

 日本共産党のアスベスト対策チーム(責任者・市田忠義書記局長)の副責任者・吉井英勝衆院議員は8月1日、熊本県宇城市松橋町(旧・下益城郡松橋町)で、アスベスト採掘跡地の住民と懇談。これまで同地域では中皮腫はないとされていたにもかかわらず、中皮腫疑いで手術した人もいました。
 旧松橋(まつばせ)町は1887年ころからアスベストの採掘と製造が進められ、採掘は70年まで、製造は83年まで続けられました。
 88年の40歳以上の町民を対象にした肺がん検診では、アスベストが原因と疑われる多数の胸膜プラーク(肥厚斑)が発見され、現在1152人が市の健康管理システムに登録されています。
 豊福公民館での町民との懇談では、不安の声が次々と寄せられました。
 4年前に中皮腫の疑いで手術した沢田義治さん(77)は「(戦前)母親がアスベスト工場に勤めていて、ごみがもうもうとしている所に迎えにいってた。全部自己負担だった。役場に電話してもたらいまわしされ、どこに連絡したらいいのかわからない」と話していました。
 26年ほど前に、引っ越してきた中尾美恵子さん(58)は「子どもが、昔はアスベスト製品がむき出しになっている所で遊んでいたので不安だといっている。心配でたまらない」などと訴えていました。
 調査団は宇城市役所、熊本県庁でも聞き取り。吉井氏は「企業や公費負担で徹底した調査をし、見つかった人への被害補償の制度をつくらないといけない」と話していました。
 調査には、吉井氏とともに、松岡徹熊本県議、宮田しずのり兵庫県議、早川進尼崎市議、五嶋映司宇城市議らが参加しました。

(2005.8.2赤旗)


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