関西電力美浜原発3号機事故の労働災害等に関する質問主意書

2005年3月25日
吉 井 英 勝

 原発の下請労働者の労災はこれまで隠されてきて、癌や白血病などによる死亡も、なかなか実態が明らかにされてきていない。したがって、昨年8月の関西電力(以下、関電という)美浜原子力発電所3号機の2次冷却水漏洩事故の労災の全容解明に取り組むことは、これからの原発労災解明や対策につながる重要な契機になるものである。
 この関電の事故は、火力発電所のタービン建屋の事故と同じもので、原発とは結びつかない普通の事故というものではない。そのことは、関電自身が、その「定期安全レビュー」の中で、1986年アメリカのサリー原発における2次系冷却水配管破断事故や1979年のスリーマイル島原発事故で2次冷却水喪失が炉心溶融事故になったことを記述していることによっても明らかである。
 関電美浜原発3号機事故は、原発本体の事故につながりかねない重大な内容をもつ事故であった。しかも、この事故では、下請作業に入っていた木内計測の4人(後にさらに1人増えて5人)の労働者が気道の火傷によって窒息死し、他の6人がひどい大火傷を負って入院するという重大な事態を生じた。
 それだけに、被災の実態をきちんと調査する必要がある。そこで、事故発生直後の昨年8月10日に、現地において提供を受けた被災直後の写真を精査してみると、表1のリストのように、事故発生時にタービン建屋内で定期点検準備作業に従事していた企業名と、企業ごとの登録作業員数が明らかになった。
 関電の報告によると、実際に、タービン建屋内にいたのは下請会社104人と関電社員1人の合計105人、そのうち、事故発生時には、1階に60人、2階に20人、3階に25人がいたということである。下請仕事は企業ごとに内容が異なるから、ほぼまとまった場所で行われる。したがって、企業別に労働者が建屋内のどこでどういう仕事をしている時に、事故に遭遇したかはすべて明瞭になるはずである。
 建屋内にいたすべての労働者が、140度Cを超える10気圧に加圧された800トン、学校プール3つ分の大量の高温・高圧の熱水の中に置かれ、100度Cを超える高温蒸気にさらされた事故であった。したがって、火傷や肺をはじめとする気管支に障害は出なかったかなど、全員の健康調査は当然のことである。
 この事故で、木内計測の11人だけが死傷者となり、他の13社の94人は、同じ条件の中にいて何の被害も受けなかったというのは、普通では考えられない事態である。
 よって、次のとおり質問する。
(1)関電は、2次系冷却水の大量漏洩については、「定期安全レビュー」の中で、1986年アメリカのサリー原発でも同様の2次系冷却水配管の減肉による破断事故で死傷者が出たこと、また、1979年同じくスリーマイル島原発では2次冷却水喪失が原子炉本体に影響を及ぼして炉心溶融の大事故になったことを示していた。
 政府は、昨年8月の関電美浜3号機事故が、原発本体の事故に繋がりかねない重大な内容をもつ事故であったと考えているか。それとも、原発事故につながる心配は全くない普通の事故と考えているのか。

(2)この「定期安全レビュー報告書」で、関電は「1975年から計画的に肉圧測定を行っており、検査したが問題になる減肉はなかった」としていた。この時、国は、何ヶ所か抜き打ち的に測定して、減肉の状況をチェックして、関電の報告書に間違いがないかどうか独自の検査を行ったのか。
 さらに、この「定期安全レビュー報告書」で、関電が「サリー原発のような事故は起こらない」としたことに対して、通産省(現・経済産業省)が、「確率論的安全評価」などを行って「妥当なもの」としてきたことを、政府は今でも正しい評価であったと考えているのか。

(3)表1に掲げた企業ごとに、その社員がそれぞれ何人で、どこで事故に遭遇し、健康調査の結果どんな被害を受けていたのか、明らかにされたい。

(4)さる2月28日の予算委員会第5分科会において、尾辻厚生労働大臣から、「(事故)当日に現地の福井労働局に重大災害対策本部を設置して、福井労働局及び所轄の敦賀労働基準監督署により災害調査を詳細に実施した結果」「(下請ごとの)リーダーへの聞き取りをして確認したと。」「本災害において11名以外の者については被災者がいなかった」「こういうふうにさっき報告をしております」と答弁があった。
 関西電力の事故の「最終報告書」においても、死傷した木内計測の11人の労働者の中で、タービン建屋1階で発見された人は5人、2階で発見された人は6人とされて、それぞれ場所も示されている。
 関電の発表による1階の60人の中で木内計測の5人が死傷し、2階で働いていた20人の中で木内計測の6人が死傷したことになる。1階でも2階でも、木内計測の社員だけが全員死傷し、他の下請企業の社員は全く被害を受けなかったというのは、あまりにも不自然なことである。
 現地の労働基準監督署が、事故当日に「調査を詳細に実施した」のであれば、前記質問(1)の内容については、105人の労働者一人一人について、事故発生時にどこで作業をしていたか、建屋外へ逃げ出すまでに何分の時間を要したか、さらに体の火傷の状態はどうだったか、100度Cを超える高温蒸気を吸い込んだのか、肺をはじめとする気管支に障害は出なかったのか、気管支の火傷の度合いはどうであったかについては、医療機関の全員検診の結果も含めて掌握しているものと考えられる。
 そこで、労働基準監督署が「詳細に実施した」としている調査内容と結果を具体的に明らかにされたい。

(5)5人の犠牲者は気道の火傷による窒息死であっただけに、建屋内にいた全労働者の気管支をはじめ検診を行うことは労働災害に取り組む立場から当然のことである。
 この点で、タービン建屋3階にいた関電社員1人についても、また、関電消防隊など、事故直後に救援に入った関係者についても検診は行ったのか、厚生労働省の取組みを報告されたい。

(6)労働災害を防ぐための、労働安全衛生に責任を負う管理者は現場にいなかったのか。
 関電職員は、事故発生当時、タービン建屋周辺に何人いたのか。タービン建屋内にいた関電社員は、3階の1人を除いて、他にいなかったのか。
 3月12日に、原子力安全・保安院は、関電美浜原発3号機の配管の肉圧測定や管理業務を関電は下請の「日本アーム」という企業に丸投げしていたことを明らかにした。
 通常、関電が定期点検や定期点検準備作業を行う時、作業の全体を指揮監督する管理者や労働安全管理者を置かないことになっているのか。点検業務の丸投げで元請けとなった日本アームの社員は、事前準備作業を指揮監督する管理者や労働安全管理者を置かなくてもよいことになっているのか。
 以上のことについて、厚生労働省は、特に行政指導を行なわず、監督上の行政責任は負わないことになっているのか。
 右、質問する。

参考資料 関東美浜原発3号機事故質問主意書の表

上記に対する答弁書(PDFファイル)

大型量販店の火災対策に関する質問主意書

2005年3月25日
                                              吉 井 英 勝

 2004年12月に発生したさいたま市ドン・キホーテ浦和花月店の火災で、従業員3人の方が犠牲となった。この事故は、これまでの大型量販店の火災事故とは異なる問題も明らかにした。ドン・キホーテの店舗(大阪市のパウ住之江公園店など)の現地調査によって、買い物客とそこに働く労働者の安全を守る上で幾つかの問題が浮かび上がってきた。
 店舗内に「商品ジャングル・遭難注意」と表示されているが、その特徴としている「圧縮陳列」と呼ばれる商品の置きかたは、企業利益第一主義にもとづくもので、買い物客や従業員の安全が考慮されているのか、はなはだ疑問とされる。消防当局等が、業者に対して行政指導を行うにも、消防法や各自治体の火災予防条例などによっては、客と従業員の安全を守る指導を十分に果たすことが困難である実情を示している。
 よって、以下のとおり質問する。
(1)現地調査によれば、2階の売り場に立った時、平常時でも1階へどうすればすみやかに下りられるかが分からない状況だが、火災発生時に停電となれば、全く脱出の仕方が分からなくなる配置になっている。
 また、1階では、「入口」を入ったあと、もう1度「入口」に向かって外へ出ようとしても外へ出られない仕掛けがなされている。1階も迷路だが、その上、発災時には一方向で避難が難しい。
 避難上、もともと1.6メートル幅の主要避難通路と1.2メートルの補助避難通路の確保が消防法と施行令、それを受けた自治体の火災予防条例によって、義務づけられているが、商品棚の上に棒を出して商品をつり下げることで、実質的に避難通路幅を狭くすることなどについては行政指導がためらわれているのが実情である。
 主要避難通路と補助避難通路の間に狭い通路を設け、両側に天井まで商品を陳列する棚を設けることによって迷路の状態をつくっている。この迷路状の商品陳列場所の中で、発災時の避難は大変難しくなっている。
 大阪千日デパート火災の後の消防法施行令改正、熊本大洋デパート火災の後の消防法令の改正など、その度に火災を予防し、発災時に人命を守る規制を強めてきたが、規制基準の対象になるかどうか明確になっていないものについては、行政指導が行えるように必要な措置をとるべきではないか。

(2)千日デパート火災の場合、発火現場となったニチイ衣料品売り場周辺の状況について「豊富な内部可燃物を媒体にして瞬く間に燃焼範囲を拡大させ」て次々と高層階へと延焼したこと。「店内装飾が多く」、「大量の衣類が陳列」され「しかも化学繊維を使用した製品が多かった」ために、「煙と有毒ガスが大量に発生した」ことによって、消火活動が困難を極め、犠牲者を拡大したことが明らかにされている。(「大阪消防誌に見る消防史」)
 過日のドン・キホーテ浦和花月店の火災事故でもこれが消火活動を長時間かかるものにして、3人の犠牲者を出してしまうことにつながっている。
 火災時の煙と有毒ガスの発生量を抑制する方策として、小売売り場における単位床面積当たりの化学繊維の量、揮発性危険物の量などの許容量を研究して、基準を示すことを考えるべきでないか。

(3)家庭用パチンコ機のような重量物が1番上の棚に置かれているが、震災時にはこれが落下して買い物客を傷付けてしまうだけでなく、商品の散乱で、迷路の中から客の脱出はさらに困難な状況になる。建物の耐震構造基準だけでなく、商品陳列に当たっての耐震基準を設けるべきでないか。

(4)ドン・キホーテ内部に「ポルノ・コーナー」が設けられていて、一応「18歳未満の方は入らないで下さい」と書いたビニールの暖簾がかかってはいるが、その内部は性遊具をはじめポルノビデオなどが「圧縮陳列」されている。奈良県の幼女殺人事件などのなかで、無秩序で異常な性情報の氾濫や商業主義のあり方が問題になってきている。こういう時に、子供づれの家族も、子供だけでも出入りできる商業施設で、出入りしやすいポルノ・コーナーを設置する大型商業施設そのものが異常といえる。
 政府は、地方自治体が大規模小売店舗の出店にあたって地域の環境や防災対策の立場から、火災対策、地震対策、子どもを性情報の商業主義的氾濫から保護する必要な規制を、営業時間を含めて行う条例の制定等を支援するべきではないか。また、地方分権の障害となり、地方自治体を規制している「大規模小売店舗立地法」第13条の規制を廃止する立場で、法制定5年経過後の見直しを行うべきではないか。

(5)風俗営業適正化法第二条6項5号では「店舗を設けて、専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業」と店舗型性風俗特殊営業の定義を示している。
 ドン・キホーテは「専ら」「性遊具等」を販売する店舗ではないが、ドン・キホーテの中の「ポルノ・コーナー」は「専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるもの」、性遊具を「販売し」ている。
 同法は、「少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため」として、営業時間・区域を制限することにして、「専ら」ポルノ・ショップの出店は規制するものの、「ポルノ・コーナー」を含む店舗は「専ら」の定義に当てはまらないとして、青少年も出入りするドン・キホーテのような営業手法を取れば、風俗営業適正化法の制限を受けることなくポルノ・ショップが学校周辺や住宅地にも進出できることになる。これは、脱法的営業であり、法律や政令改正で制限するべきではないか。
 右、質問する。

上記に対する答弁書(PDFファイル)