平成16年8月6日提出
質問第69号
プルトニウム利用政策に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成十六年六月十五日
提出者 吉井英勝
もんじゅ事故、東海再処理工場事故、JCO臨界事故など安全を軽視して推進してきたプルトニウム循環方式の破綻が明らかになっている。それにとどまらず、東京電力などの原発トラブル隠しに続いて今回、再処理と直接処分のコスト比較が80年代から行われていたのに、政府の手でこうした原子力情報が長らく隠されてきたことが明らかになった。いまこそ、情報隠しで不信の高まっている国民無視の原子力政策から転換して、事実を総て正直に国民に示すべきである。
すでにこれまで原発と核燃料サイクルをすすめてきた各国政府の中でその多くは、プルトニウムを作らないという核政策、技術的困難性、発電コストなどの理由で、核燃料サイクル政策を中止してきた。もちろん、高速増殖炉計画からも撤退してきた。これが世界の流れであり、原子力、とりわけプルトニウムの増殖炉やプルサーマルに固執する日本は、世界から取り残されつつあるといえる。
今年六月に提出した「プルトニウム利用政策に関する質問主意書」において、〔プルトニウム過剰〕〔全量再処理方式〕〔プルサーマル実施計画と事故時の放出放射線量予測〕〔再処理の場合と直接処理の燃料コスト〕〔六ヶ所再処理施設試運転問題〕などについての政府見解をただした。これに対する政府答弁書を踏まえ、安全性とコストの両面から改めて質問する。
一 〔再処理の場合と直接処分の燃料コスト〕
1 答弁書では、六ヶ所再処理工場稼働分だけの計算で、
2000年法律第117号第11条−拠出金 10兆1000億円
今後「引当金」対象とすべき費目 5兆1000億円
費用発生年度に当期費用として経理 ▲ 1000億円
・・・・・・・・・・・
料金原価に影響を与えるもの 15兆1000億円
これを2%割引率を用いて試算すると、1kw時当たり36銭になると答弁している。
しかし、再処理に踏み切ると、一層放射線レベルの高いMOXの使用済み燃料の再処理工場の費用と、高レベル放射性廃棄物と超ウラン元素の最終処分の費用まで含めて考えなければならないが、それは幾らになると政府は検討しているのか。
2 バックエンド事業全体の試算も行われているが、98年3月に出された旧通産省の委託による(財)原子力環境整備センターの「使用済燃料の直接処分を考慮した核燃料サイクルバックエンド費用の検討」の報告書である「将来の使用済燃料対策の検討(その3)報告書」がある。そこでは直接処分の費用として、
結晶質岩 堆積岩
(A)使用済核燃料直接処分 4兆1993億円 6兆907億円
昨秋電事連が発表した六ヶ所再処理工場の費用(B) 18兆8000億円と比較すると
(B)/(A)比 4.47倍 3.1倍
98年3月の報告書の結晶質岩か堆積岩かの違いによるが、発表されている(B)との比較では、再処理・MOX燃料方式が直接処分に較べて、2〜4倍になるのではないか。
3 今年2月の虚偽答弁が問題になっているが、燃料コストの問題は94年のデータ隠しだけでなく、前記2の質問にも挙げた報告書も長く伏せられてきた。
政府答弁書では、「今後の原子力委員会新計画策定会議において・・・必要に応じて参考にしつつ議論が行われることとなる」としているが、これまでの検討経過が明らかにされる必要がある。
そこで、以下の委託研究にもとづく試算や報告書が出された時に、原子力委員会と政府部内で、再処理路線か直接処分の選択かについてどのような検討を行って、原子力政策に反映させようとしたのか、それぞれの時期ごとに明らかにされたい。
1982年9月 「原子力開発利用長期計画参考資料」「核燃料サイクルに係る経済性の評価について(試算)」 科学技術庁原子力局原子力調査室
1985年5月 「原子力委員会再処理推進懇談会(第10回)資料」「プルトニウム利用の経済性評価例」
1986年3月 「プルトニウム利用に関する調査」 三菱総合研究所(調査委員長・鈴木篤之東大助教授・現原子力安全委員会委員長代理)
1986年8月 「長期計画専門部会第2分科会(第2回)資料」「プルトニウム利用の経済性について」
1993年(92年度委託) 「原子力発電の将来展望に関する調査−軽水炉における再処理方式と直接処分方式の経済性評価」 (財)日本エネルギー経済研究所
1994年2月 「総合エネルギー調査会長期計画専門部会第2分科会(第14回)資料」「軽水炉によるプルトニウム利用に関する経済性について」
「総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題作業グループ参考資料」「核燃料サイクルの経済性試算について」
(96年2月 電気事業連合会検討会とりまとめ資料−再処理と直接処分の経済性研究)
1997年7月 「原子力委員会高速増殖炉懇談会(第7回)資料」「燃料サイクルの比較−エネルギー、廃棄物および経済性の観点から」
1998年3月 「将来の使用済燃料対策の検討(その3)報告書−使用済燃料の直接処分を考慮した核燃料サイクルバックエンド費用の検討」(旧通産省委託)(財)原子力環境整備センター
4 これまでの試算等が公表されてこなかった(非公開とされてきた)のはなぜか。
公表されてこなかった(非公開だった)ことは、国民に対する説明責任をまったく無視して核燃料サイクル政策がすすめられてきたことを意味するが、政府として、現時点でどう考えるか。
公表を隠していたとはいえ、国会で、その存在そのものを否定する虚偽答弁をなぜ行ったのか。
5 長期にわたる核燃料コスト比較などの情報隠しと虚偽答弁などを繰り返してきた政府や電力業者の行為の根底には、プルトニウム循環方式の原発推進政策がある。したがって、いま必要なのは、「長期エネルギー需給見通し」や「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の部分的手直しですませるのでなく、プルトニウム利用の原子力政策、エネルギー政策の根本的転換をすすめることではないか。
二 〔プルトニウム過剰〕
1 答弁書で示された、海外再処理委託の内、ヘビーメタルで再処理の終了したものは6800d、一方、回収プルトニウムは、実績値で27dとしているが、これは回収率として考えると0.40%となる。
しかし、一般的に、プルトニウム量は、使用済み核燃料の1%、その中で核分裂性プルトニウムは大体その60%から70%とされている。実際にフランスのコジェマからの返還プルトニウムの同位体組成では、核分裂性プルトニウムの同位体組成は70%を超えるものがある。これからすると、6800dを処理すると核分裂性プルトニウムは40.8d〜47.6dとなる。答弁書の「実績値」27d(回収率0.40%)というのは余りにも過少ではないのか。なぜこのような差が生じるのか。
一方、残余の再処理量は300dだが、そこからのプルトニウムの回収量は5d(回収率1.67%)を見込んでいる。この回収率からすると、海外再処理の核分裂性プルトニウムは113dとなり、答弁書の32dはやはり過少ではないか。
また、国内使用済み核燃料12000dの回収量見込み71dが0.59%であることを考えても、海外での残余の再処理については回収率が3倍も大きくなる理由は考えにくい。何故3倍も多く回収されることになるのか。
2 国内実用発電用原子炉から発生する使用済み核燃料のプルトニウム含有量について、答弁書では、「含まれる核分裂性プルトニウムの量は、燃料集合体の種類ごとに大きく異なる」としている。それでは、政府が考えている燃料集合体の種類ごとの核分裂性プルトニウムの含有率は、種類ごとにそれぞれ幾らか。それぞれの燃焼度も示して明らかにされたい。
3 六ヶ所再処理工場の処理能力(公称)は、使用済み核燃料投入量800dで、回収プルトニウムは5dと答弁しているが、この回収率(0.63%)なら、海外再処理分の核分裂性プルトニウムは42.5dとなり、やはり27dを大きく上回る。
日本の核分裂性プルトニウム量を答弁書の通りとすると、この六ヶ所再処理工場をn年間稼働させると、現在の回収プルトニウム量と合わせて、32d+5d×nとなる。
2010年からプルサーマル実施(16〜18基)の場合は、年間5〜8dのプルトニウム利用で、200X年高速増殖原型炉「もんじゅ」が稼働の場合、年間数百sのプルトニウム利用としている。
年間5dの利用の場合、いつまでも32dの余剰プルトニウムを持ちつづけることになり、プルトニウム8dで核兵器(長崎型原爆)1発として4000発分という大きな核兵器生産能力をもつ国として、国際的に不信を持たれ続けることになるのでないか。
年間8dの利用の場合でも十数年間も余剰プルトニウムを持ちつづけることになるのではないか。
4 1993年11月13日に動力炉・核燃料開発事業団が主催した「核不拡散国際フォーラム」の中で、米政府代表は「日本がプルトニウムを保有することを周辺諸国は潜在的脅威と受け取る」「ウラン燃料はまだ枯渇する心配はなく、使用済み核燃料を再処理する緊急性はない。日本は核燃料サイクル政策を急ぐべきでない」などと発言していた。
日本政府としてプルトニウム政策への国際的不信やアジア各国の感じている脅威を、どのように認識してきたのか。これはIAEAの査察を受けているといっても潜在的脅威が解消されるという問題ではない。政府がプルトニウム利用政策を放棄することが、特にアジア諸国への潜在的脅威を解消する道になるのではないか。
三 〔プルサーマル実施計画と事故時の放出放射線量予測〕
1 答弁書によると、核燃料中の分裂性プルトニウムの割合、及びアクチノイド系物質について、燃料集合体1体当たりで見ると、
ウラン燃料中プルトニウムは燃焼前 0.0重量%、燃焼後0.53重量%
アクチノイドは燃焼前 173s、 燃焼後 163s(10s燃焼)
燃焼度は当然、燃焼前0MWD/t、 燃焼後55000MWD/t
MOX燃料中プルトニウムは燃焼前 2.9重量%、燃焼後1.4重量%
アクチノイドは燃焼前 165s、 燃焼後 158s(7s燃焼)
燃焼度は燃焼前時点で0MWD/t、 燃焼後40000MWD/t
とされている。
軽水炉でウランだけ燃焼する場合の燃焼度は55000MWD/t、これに対して稀ガスの発生が多いMOXでは被覆管のガス溜め部分を多く取ったりしているが、それでも燃焼度を40000MWD/tに抑えることにしている。
これは、答弁書にいうウラン燃料装荷とMOX装荷の場合で違いがないとすること自体が妥当でないことを示しているのではないか。
プルサーマルの燃焼度を55000MWD/tとして考えると、アクチノイド7s燃焼が、10sとなりウラン燃料並みとなる。またその時、プルトニウムの燃焼は1.5重量%が2.06重量%まで進行することになる。(勿論プルトニウムは消費と生成の両方があり燃焼が2.06と簡単には言えないが、一応この値にする。)
この時、分裂性プルトニウム1.5重量%の燃焼にともなって発生する放射線量は幾らか。また、2.06重量%の燃焼なら幾らの放射線量になるか。
更に、答弁書に示すアクチノイド系物質の中で、Np−239、Pu−238、Pu−239、Pu−240、Pu−241、Am−241、Cm−242、Cm−244の予定した燃焼度に達した時点で放出される放射線量はそれぞれの物質ごとに幾らか。α線、β線、γ線、中性子線それぞれについてM Ci単位で示されたうえ、算出の基準又は根拠を明らかにされたい。
2 東京電力柏崎刈羽原発3号炉での事故態様による放出放射線量について答弁書は、原子炉冷却材喪失時と主蒸気管破断時について、重大事故と仮想事故の時の沃素と稀ガスの想定放出量を示した上で、米国核管理研究所「報告書」における過酷事故の評価については、「極端な前提をおいて評価をおこなったもの」としている。
米国核管理研究所「報告書」における過酷事故の評価を認めない根拠はなにか。
原子炉の閉じ込め機能が喪失される事故は、当然検討し評価されるべきものである。すでに日本でも、次の3の質問に示したような検討が行われており、答弁書に示された見解は妥当なものとはいえない。
「極端な前提をおいて」というのは、どの部分がどのように「極端」か、該当箇所を示して、政府の具体的な反論を示されたい。
そもそも日本では過酷事故は起こらないとしている政府の根拠はどこにあるのか。
3 すでに政府は、旧科学技術庁が日本原子力産業会議に委託して「大型原子炉の事故の理論的可能性及び大衆損害に関する試算」(1959年度のとりまとめ)を行っている。その要約は1961年の国会に参考資料として提出されている。
この想定では、事故までに約四年間運転した熱出力50万キロワット、電気出力では16万キロワット級の動力炉としているが、それが過酷事故を起こした時に、
(イ)揮発性の稀ガスの全部と沃素の50%と向骨性元素の1%とセシウムの10%とが放出される量は、楽観的にみて10の5乗キュリー。悲観的にみると10の7乗キュリー(それぞれ24時間後)。
(ロ)炉内の内蔵分裂生成物に比例した割合で全放出する場合の量は、楽観的な場合10の5乗、悲観的なケースでは10の7乗キュリー。(熱出力50万キロワットの原子炉の内蔵放射能の全量は5×10の8乗キュリーとしている。)
答弁書に示された東京電力柏崎刈羽原発の例でみれば、ウラン燃料の過酷事故の場合には、59年度の報告書の試算の約10倍近く高いものになるのではないか。
四 〔全量再処理方式と六ヶ所再処理施設試運転〕
1 使用済み核燃料の「全量再処理」方式は、プルトニウムを総て使い切るということが前提になっている。しかし、この大本にあった高速増殖炉(FBR)路線は失敗し、それでも再処理をすすめるとプルトニウムが過剰となる。プルサーマルでこれを総て燃やすと、使用済みMOX燃料再処理のための第2再処理工場が必要になるのではないか。
軽水炉で発生する使用済み核燃料を総て処理するには、六ヶ所再処理工場の処理能力を超えるので、その分は、直接処分に回すことになる。そうすると、再処理費用だけでなく、再処理能力を超える使用済み核燃料の直接処分費用も加算されることになるのではないか。その費用の見積もりは幾らとしているのか。
2 六ヶ所再処理工場の劣化ウランを使った試運転も本格運転も、これを始めると施設の放射能汚染を生じることになるし、また構造物の放射化がすすむ。再処理路線を変更する時に、新たな莫大な費用負担を生じることになるのではないか。
3 「全量再処理」方式の破綻は明白になっている。これ以上、放射性毒性の強いプルトニウムの危険を増大させないためにも、国際的不信を招かないためにも、プルサーマル利用と使用済み核燃料の「全量再処理」は止めるべきであり、そのためにも六ヶ所再処理工場の稼働につながるウランテストは行うべきでない。中止を決断すべきでないか。
右質問する
平成16年8月31日受領
答弁第69号
内閣衆質160第69号
平成16年8月31日
内閣総理大臣 小泉純一郎
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員吉井英勝君提出プルトニウム利用政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
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衆議院議員吉井英勝君提出プルトニウム利用政策に関する質問に対する答弁書
一の1について
お尋ねの「一層放射線レベルの高いMOXの使用済み燃料の再処理工場」とは、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(平成12年11月24日原子力委員会決定。以下「現行の長計」という。)にいう「六ヶ所再処理工場に続く再処理工場」(以下「新工場」という。)を指すものと考えるが、「一層放射線レベルの高いMOXの使用済み燃料の再処理工場の費用」等を勘案した場合において、いわゆるバックエンド費用が電気の料金原価に与える影響がいくらになるかというお尋ねについては、現行の長計において、「六ヶ所再処理工場に続く再処理工場は・・・高燃焼度燃料や軽水炉使用済MOX燃料の再処理も行える施設とすることが適当と考えられるが、さらに、今後の技術開発の進捗を踏まえて、高速増殖炉の使用済燃料の再処理も可能にすることも考えられ・・・この工場の・・・建設計画については・・・2010年頃から検討が開始されることが適当」としているところ、現時点において新工場の建設等に係る具体的な計画が明らかになっているわけではないことなどから、検討を行っておらず、お答えすることは困難である。
一の2について
お尋ねの「4兆1993億円」及び「6兆907億円」という金額については、使用済燃料を直接処分する場合における使用済燃料の埋設費のみを試算したものであり、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会において電気事業者から示された試算費用に含まれるウラン濃縮工場の解体費用、使用済燃料の貯蔵及び輸送に係る費用等に相当する費用が勘案されておらず、これらを用いて「再処理・MOX燃料方式」と「直接処分」とを比較することは適切ではないと考える。
一の3について
お尋ねの資料のうち「「総合エネルギー調査会長期計画専門部会第2分科会(第14回)資料」「軽水炉によるプルトニウム利用に関する経済性について」」は、平成6年2月に開催された「原子力委員会長期計画専門部会第2分科会(第14回)」において用いられた「軽水炉によるプルトニウム利用に関する経済性について」を指すものと考えるが、お尋ねの資料に係る資料作成の目的、資料を用いた検討の結果等については、別表第一のとおりである。
一の4及び5について
お尋ねの試算等のうち「「原子力委員会高速増殖炉懇談会(第7回)資料」「燃料サイクルの比較―エネルギー、廃棄物および経済性の観点から」」については、平成9年7月に公表をしているところである。その他の作成の時点で公表されなかった試算等については、当該試算等が使用された当時の審議会等において、原則としてすべての配付資料について非公表の取扱いをしていたことなどから、公表することがなかったところであるが、当該試算等については、学識経験者等社会の様々な立場を代表する委員からなる審議会等に提示するなどしてきており、また、これらの審議会等での議論等を経て決定された核燃料サイクル政策については、原子力白書や「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」等の公表等を通じ、国民の理解の増進に努めてきたところであって、「国民に対する説明責任をまったく無視して核燃料サイクル政策がすすめられてきた」との御指摘は当たらないと考える。
お尋ねの国会での答弁については、経済産業省として当該試算等を隠す意図はなかったものの、答弁を行った当時、答弁を行った者等が当該試算等の存在を認識していなかったことから、結果として事実と異なる答弁を行ったものである。
お尋ねの試算等の多くが作成の時点で公表されなかったこと及びお尋ねの国会答弁が結果として事実と異なる答弁であったことについては、右に述べたように、当該試算等を隠す意図の下で行われたものではなく、これらの「行為の根底には、プルトニウム循環方式の原発推進政策がある」との御指摘は当たらないと考える。
二の1について
電気事業連合会を通じ実用発電用原子炉を有する10社の電気事業者(以下「本件電気事業者」という。)から聴取したところ、お尋ねの点については、次のとおりであるとのことである。
本年3月末現在、海外の再処理事業者に再処理を委託した使用済核燃料については、そのうち英国の核燃料会社(以下「核燃料会社」という。)に委託した使用済みの軽水炉用ウラン燃料(以下「使用済軽水炉燃料」という。)の一部について再処理が終了していないところであるが、本件電気事業者と核燃料会社との間の契約においては、核燃料会社が本件電気事業者を含む一定の顧客から再処理の委託を受けた使用済軽水炉燃料を一つのまとまりとしてとらえ、そこから回収されたプルトニウム239及びプルトニウム241(以下「核分裂性プルトニウム」という。)を、各顧客が再処理を委託した使用済軽水炉燃料が実際に再処理されたか否かにかかわらず、各顧客が再処理を委託した使用済軽水炉燃料に含まれる核分裂性プルトニウムの量に応じて、各顧客に割り当てることとなっているため、使用済軽水炉燃料が実際に再処理される時点と核分裂性プルトニウムが割り当てられる時点との間に時間的なずれが生じることとなる。本件電気事業者においては、かかる割当てを核分裂性プルトニウムの「回収」ととらえているところ、本年3月末時点においては、それまでに回収された核分裂性プルトニウムの量が相対的に少なくなっており、またその後回収されると見込まれる核分裂性プルトニウムの量が相対的に多くなっているが、当該割当てがすべて終了した段階で、本件電気事業者が核燃料会社に再処理を委託した使用済軽水炉燃料に含まれる核分裂性プルトニウムと等量の核分裂性プルトニウムが回収されることとなる。
なお、使用済核燃料における核分裂性プルトニウムの含有率は、当該使用済核燃料の燃焼度等によって異なるが、本件電気事業者が海外の再処理事業者に再処理を委託した使用済核燃料は、平均燃焼度が燃料物質1トン当たり約3千メガワット日の使用済みのガス炉用ウラン燃料及び平均燃焼度が燃料物質1トン当たり約2万5千メガワット日の使用済軽水炉燃料であり、これらの燃焼度は、近年における使用済軽水炉燃料の平均的な燃焼度である燃料物質一トン当たり約四万ないし約四万五千メガワット日よりも低いものとなっているため、海外の再処理事業者に再処理を委託した約7100トン・ヘビーメタルの使用済核燃料における回収予定の約32トンの核分裂性プルトニウムの含有率は、約0.45重量パーセントと相対的に低いものとなっている。
二の2について
将来、実用発電用原子炉において使用されることとなる燃料の種類等を確定することができないため、お尋ねの「核分裂性プルトニウムの含有率」等を網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所3号炉において同炉における標準的な組成のウラン・プルトニウム混合酸化物(以下「MOX」という。)燃料及びウラン燃料を燃焼した場合並びに関西電力株式会社高浜発電所四号炉において同炉における標準的な組成のMOX燃料及びウラン燃料を燃焼した場合について、東京電力株式会社及び関西電力株式会社から聴取したところ、お尋ねの点については、別表第二のとおりであるとのことである。
二の3及び4について
お尋ねの32トンのプルトニウムを含め、我が国において、プルトニウムの利用を進めるに当たっては、安全確保に万全を期するとともに、核兵器の不拡散に関する条約(昭和51年条約第6号)を締結し、国際原子力機関(IAEA)の保障措置の下で、核物質、施設等を厳格に管理し、平和利用に係る透明性の確保の徹底を図るとともに、我が国の平和利用政策に係る国際的理解と信頼を得る外交的努力を行うなど、国際社会の理解と信頼の確保に努めているところである。今般、国際原子力機関が、我が国について、未申告の核物質及び原子力活動が存在せず、その保有するすべての核物質が保障措置下にあり平和利用されているとの結論を出したところであるが、国際原子力機関が大規模な原子力活動を行う国についてかかる結論を出したのは初めてのことであり、一般に、右に述べたような我が国の努力は、国際的にも評価されているものと認識している。
三の1について
先の答弁書(平成16年7月6日内閣衆質159第188号。以下「前回答弁書」という。)におけるお尋ねの「ウラン燃料装荷とMOX装荷の場合で違いがない」旨の答弁については、前回答弁書四の2についてで述べたとおり、MOX燃料の最高燃焼度が燃料物質1トン当たり4万5千メガワット日以下であるとの前提の下、MOX燃料の炉心装荷率が3分の1以下の実用発電用原子炉について、「MOX燃料を装荷した炉心に係る重大事故及び仮想事故発生時の放射性物質の放出量について、ウラン燃料を装荷した炉心に係る場合と違いがないものとして安全性の評価を行っている」旨をお答えしたものであり、「これは、答弁書にいうウラン燃料装荷とMOX装荷の場合で違いがないとすること自体が妥当でないことを示している」との御指摘は当たらないと考える。
「燃焼度を55000MWD/tとして考え」た場合のMOX燃料に係るお尋ねの点については、かかるMOX燃料の使用を前提とした実用発電用原子炉の安全審査を行っておらず、承知していない。
お尋ねの各種のアクチノイド系物質(原子番号89から103までの元素)から放出される放射線量については、前回答弁書三についてで述べたとおり、MOX燃料から放出される放射線量からアクチノイド系物質に係る放射線量を分離して特定することが困難であることから、お答えすることができない。
三の2について
前回答弁書四の3についてにおいては、お尋ねの「米国核管理研究所」の報告が「原子炉施設の閉じ込め機能が喪失し、プルトニウムが環境中に放出されるなど」の前提を置いている点について、そのような事象は、多重防護の考え方を前提として設計された原子炉施設において工学的には想定されないほど発生の可能性が低いものであることから、「極端な前提」と述べたものであり、我が国における実用発電用原子炉の安全審査の際には、かかる事象の発生は想定していない。
なお、お尋ねの「大型原子炉の事故の理論的可能性及び大衆損害に関する試算」(以下「59年報告書」という。)については、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)の制定時に、原子力損害賠償制度の検討に資することを目的として、工学的には想定されないほど発生の可能性が低く、実用発電用原子炉の安全審査では前提とする必要のないような仮想的な前提を置いて試算を行ったものである。
三の3について
三の2についてで述べたように、実用発電用原子炉の安全審査に当たっては、59年報告書で用いたような前提を使用した評価は行っておらず、お尋ねの点についてお答えすることは困難である。
四の1及び2について
一の1についてで述べたとおり、現行の長計においては、新工場の建設計画について、平成22年頃から検討が開始されることが適当であるとしている。
現行の長計においては、国民の理解を得つつ、使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくことを国の基本的考え方とし、使用済燃料が再処理されるまでの間の時間的な調整を行うため、中間貯蔵が重要であるとしており、また、「エネルギー基本計画」(平成15年10月7日閣議決定)においては、「我が国としては核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的考え方」としているところ、両計画においては、「再処理能力を超える使用済み核燃料の直接処分」の実施や「再処理路線」の変更は想定していない。
四の3について
四の1及び2についてで述べたとおり、現行の長計においては、国民の理解を得つつ、使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくことを国の基本的考え方とし、また、「エネルギー基本計画」においては、「我が国としては核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的考え方」としている。このような考え方の下、二の3及び4についてで述べたように、我が国のプルトニウム利用に対する国際社会の理解と信頼を得るべく努めてきているところである。
他方、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」については、原子力委員会が、昭和31年からこれまでおおむね5年ごとに合計9回策定してきており、平成12年11月24日の現行の長計の策定から、来年11月で5年を迎えることとなるため、同委員会が新たな「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の策定作業に着手したところである。
ウラン試験の実施等日本原燃株式会社の六ヶ所再処理工場の稼動に向けた個別の事業の具体的な進め方については、このような状況も踏まえて、実施者である同社が安全確保を前提に地元の理解を得つつ判断するものであると考える。
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