162国会 衆院内閣委員会 2005年6月10日

 ○竹中国務大臣・・・竹中 平蔵・経済財政政策担当大臣

○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私は、竹中大臣に、きょうは雇用、経済の問題を中心にして伺いたいと思います。
 一九九七年から、あの年の国民負担増以降、消費不況がどんと広がったのと、二〇〇一年からのリストラ構造改革不況とでもいうべき状況の中で、日本経済と国民生活を長期不況の中に置いてきました。ちょっと政府の出している数字を見ても、雇用の状況というのは、失業率の方でいいますと、これは、大体三%を超えたら昔は大問題だったんですよね。
 六〇年代で見てみますと、失業率というのは当時は大体一%台、それがその後、大体九五年ごろまでだったと思いますが、二%台になってきたわけです。しかし、それ以降、三%をはるかに超えて、特に二〇〇〇年を前後して、四・五%から五・五%に失業率がぎゅっと上昇してしまう。
 内閣府の国民経済計算から見ると、失業の増加に伴って当然雇用者の方の所得というのは落ち込んでまいりますが、労働者の賃金、報酬というので見ても、一九九七年から二〇〇三年にかけて十八兆円落ち込んでいる。
 それから、実収入の推移というのがこれまた総務省の家計調査報告で出ておりますが、大体、世帯主の、大企業に勤めている、比較的安定した企業に勤めている人でさえ、二〇〇一年から二〇〇五年にかけて、二〇〇一年を一〇〇とすると九五。これが一人から二十九人という中小零細企業の方に勤めている方だったら九一・六%ですから、要するに、実収入は九割に落ち込んできている。
 失業率は上がる、所得は落ち込む、そういう中でやはり貯蓄の方がどうなっているかというのも、政府の出している統計を見ておりますと、これは九七年から二〇〇三年にかけて可処分所得で十五兆円減少している中で、貯蓄が九兆円減っているんですね。可処分所得が減っている中で貯蓄も取り崩しながら消費へ、こういったこともあるんですが、しかし、その消費自体がこの間に七兆円減っている。
 やはり経済がずっと長い間後退という、非常に国民生活が大変だというところがここにもよく出ているわけでありますが、ですから個人消費が落ち込んでくる。当然、スーパーにしても百貨店にしても売り上げが落ち込む。これはもう当たり前の話ですが、悪循環に入ってくるわけです。
 私はここで、九七年以降の長期不況から大きな改善というのは動きが見られないんですが、やはり雇用の面でいえば、解雇の規制とかあるいは雇用を伸ばすということを政策としてきちっとやっていかないとだめだし、それから可処分所得を押し下げないという点では、暮らし、消費購買力を高める努力ですね。それはやはり政府として政策的に必要だと思うんですが、この点を最初に、竹中大臣の考えを聞いておきたいと思います。

○竹中国務大臣 まさに九〇年代以降、日本の経済は、これはさまざまな局面で大変厳しい状況に置かれていると思っております。そういう中で、二〇〇一年以降、小泉内閣のもとで構造改革を進めているわけでございます。
 まだまだ、しかし私たちの生活実感としても、ビジネスの実感としても、日本の経済は厳しい。さらには、九〇年代からは中国を初めとするアジアの国々の追い上げ等々が非常にはっきりしてくる段階で、将来のことを考えても、経済に対する非常に厳しい実感、感覚が国民の間に広がっているというふうに私も認識をしております。
 しかし同時に、日本の経済、やはり改善すべきところが、不十分ではあるかもしれないけれども改善してきたというのも事実であろうかと思います。ことしに入って発表されましたOECDの対日経済審査というのがございますが、OECDでは正式のレポートとして、日本経済は過去十年の間で最もよい状況になってきたという評価も出ているというふうに承知をしております。
 吉井委員の御指摘は、専ら生活者、消費者、家計、そういう観点からまだまだ日本の経済状況は厳しいのではないかという非常に強い問題意識をお持ちだと思いますが、これは確かにそういう側面がまだ非常に強く残っているというふうに私も思います。
 特に、九〇年代の後半ぐらいから、やはり労働市場に非常に大きな構造的な変化が起こってきた、それが現象からいいますと失業率の上昇等々になってあらわれておりますし、また正規雇用がなかなかふえない、減少する、パートに置きかえられていく、そういうような構造的な変化も生じて、これが国民生活、生活者から見ると非常に大きな生活に対する不安要因にもなってきたというふうに思っております。認識としては、その意味で、吉井委員がおっしゃった幾つかの点、やはり重要だと思います。
 ただ、幾つかの留意点をあえて申し上げれば、名目の所得は減っているわけでありますけれども、この間、物価そのものが下がっている中で、実質的な所得というのは、決して名目所得のように低下しているわけではないということが第一点。
 それと、貯蓄についても、ストックが下がっておりますけれども、これは貯蓄、貯金が減っている、つまり資産が減っている一方で、家計もやはり企業と同じように一生懸命借金を返して、企業の財務リストラに相当するようなことを個人、家計もやっている。だから、見かけ上の資産、貯金も減っているけれども、その一方で借方の負債も減らしているという面も非常に強くある、そのような面もやはりしっかりと認識しなければいけないというふうに思っております。
 いずれにしましても、消費全体がしっかりとしてこないと、経済のまさに内需の足腰というのは弱いということは、これは事実なわけでございます。
 ちなみに、これは一―三月期、御承知のように、四半期ベースで日本のGDP、一・三%、これは一次QEベースでございますけれども、ふえているわけでございます。年率換算すると五%を上回るあれをしてふえているわけでございますけれども、寄与度で見ますと、そのうちの半分ないしは半分強が実は個人消費によって実現されております。
 そういう観点からすると、個人消費も、雇用環境が改善する中でようやくその動きを見せつつある。まだ不十分ではあるけれどもよい動きは見られつつある状況であるというふうに認識をしております。

○吉井委員 要するに、六〇年代以降ずっと、失業率で見ても一%台、うんと完全失業率が減ったりとかずっとそういう状況であったのが、九〇年代、特に九七年ごろから、もう一%台どころの話じゃなくて五%を前後するところへ、これは若干そのときの四半期ベースで見れば前後しますけれども、ある意味では、瞬間風速的に上がったり下がったりするときがあるにしても、全体としてはとてもそういう改善というものは見られないわけであります。
 構造改革の話がありましたけれども、この議論をやり出すと長くなるから、私、ちょっときょうはおいておきます、十五分間じゃとても尽くせませんから。要するに、お話を聞いておって、まだ策がないというところですよ。
 そこで、九五年ごろから規制緩和万能ということが随分論じられたときに、規制緩和、大リストラ、しかし、それをやっても新規産業を創出ができるんだというお話がずっと当時ありました。当時の日経連は大体二千万人ぐらい減るとか、永野さんは当時一千数百万人の減だとか、経団連は規制緩和の経済効果レポートで九百三十四万人減るだろうとか、経企庁の当時の楽市楽座報告では三百三十七万人ぐらいですか。要するに、雇用は喪失、失われるんだ、しかしそれに見合う分が創出されるんだというのが当時の規制緩和の話で、雇用のことは心配要りませんというのでずっと来たわけですね。
 小泉内閣も五百三十万人雇用創出というのを言ってきたんですが、現実に、さっきも完全失業率の話をしましたけれども、雇用は本当に深刻なんです。では、五百三十万の話があったけれども、雇用創出の現実はあったんだけれども、何が新たに創出されているのか。五百三十万にはとても及ばないわけですが、この点はどのように見ていらっしゃるんですか。

○竹中国務大臣 新規雇用の創出についてのお尋ねでございます。
 これは、正確には小泉内閣の発足する前に既に経済財政諮問会議の専門調査会で議論がなされていたものでございますが、五百三十万人の新規雇用をこれから、あの時点でいいますと、行うという議論がございました。今中間的な集計をしておりますけれども、今の時点で五百三十万人の目標に対しまして約三百万人の雇用が創出されたというふうに考えております。
 当時の基本的な考え方は、サービス業を中心に生活密着型の分野で非常に大きな雇用の可能性があるんだ、そのような観点であったと思いますけれども、おおむねそういう観点に沿って雇用の創出がなされているというふうに考えております。
 確かに、規制緩和のときも、吉井委員御指摘のように、それによってつくられるものがあるかもしれないけれども失われるものが非常に大きいという御指摘がありました。実は不良債権の処理をするときも、私たちが考えた不良債権の処理を行ったら失業が百万人ふえるという試算を行ったシンクタンクもございまして、この国会でも御紹介をされました。しかし、結果は、不良債権を償却したことによって失業が百万人ふえるどころか、失業は減りました。その分雇用が創出されているということであると認識をしております。
 現実には、ここ数カ月をとりますと、実は毎年毎年生産年齢人口が三十万人ぐらい減っている、減っている中で雇用者の数というのは減っていない、ないしはプラスになっているわけでございますので、その意味でも、そのような新規雇用のメカニズムは、もちろんまだ十分とは言えませんけれども、進みつつあると認識しておりますので、こうした動きをさらに加速させたいと思っております。

○吉井委員 要するに、構造改革でそんなに減っていないという話をするんだけれども、現実を見れば、九七年からどうなっているか。正社員は四百万人減っているんですね、非正社員は四百万人ふえている。ですから、結局、不安定雇用への移動なんですよ。
 若者の失業率は、十五歳から二十四歳で現在一〇・三%。総務省の労働力調査で見ると、二〇〇五年一―三月期で労働に占める非正規雇用の割合は三二・三%、ですから、三人に一人ですね。つまり、新しい雇用創出というよりは、パート、アルバイト、派遣、請負雇用の不安定雇用に移していっただけのことというのが実態です。二十四歳以下で見れば四八・二%ですから、半数が非正規の職員になってしまっている。
 ですから、それに伴ってどうなっているかというと、所得格差が非常にひどくなってきているんですね。特に若者の場合ひどいんです。さっきおっしゃったOECDの別のレポートでいいますと、日本の貧困率というのは世界第五位ですね、OECDの報告では。これは国民の標準的所得の半分を下回る所得しかない人の割合が幾らかというので、日本は一五・三%、世界で第五位です。中でも若者の間で所得格差が拡大していっている。
 この間の内閣府の経済社会総合研究所の報告で、「フリーターの増加と労働所得格差の拡大」というのを私も興味深く読みました。つまり、こういう状況をやっておったら、これは当面の日本経済にとっても大変なんですよ、雇用がこの状態で。それだけじゃなしに、若者の所得格差がどんどん広がっていく。つまり、これは少子化の大きな要因にもなってきて、将来の日本経済と社会にとっても深刻である。
 こういう点では……

○松下委員長 吉井議員、質疑時間が超過していますので、短くお願いします。御指摘をします。

○吉井委員 非常に深刻な問題を引き起こしてくるということになりますから、これはやはり五百三十万、いろいろ挙げてみたけれども、これは正規が非正規に移ったとか仕方のないような話じゃなくて、本格的にここにメスを入れない限り、日本の経済財政にとっても将来にとって深刻な問題になる。それが、経済財政担当大臣として本当は、最もここのところが力を入れなきゃいけないところだと思うんです。伺います。

○竹中国務大臣 正規、非正規雇用の問題、そしてそれがもたらす格差の問題。私自身も、先ほど九〇年代の後半から労働市場において非常に大きな構造変化があると認識しているというふうに申し上げました。
 非正規雇用の増加につきましては、これは企業が人件費を抑制するためにパート、アルバイトなど非正規を増加させたという面が確かに一面ではあると思います。同時に、一方で労働者側にとりましても、若年や女性などが短時間労働や自由度の高い雇用形態を選択する傾向があるという面も、これは一面の事実としてまたあるんだと思います。
 しかし、最近また新しい変化が起こっておりまして、景気回復に伴いまして有効求人倍率が上昇する、労働需給が改善しておりまして、実はパートの求人よりもフルタイムの求人が増加をしているという状況になっております。その結果、フルタイム労働者が四カ月連続で増加する一方で、パートタイム労働者が実は九年十カ月ぶりに減少したという状況も生まれました。このパートタイム労働者比率は本年に入ってから、緩やかですけれども低下傾向にある。
 そういう雇用情勢も見えておりますので、こういった傾向をしっかりと伸ばして、雇用の確保、そしてより条件のよい雇用の安定を図っていきたいと思っております。

○吉井委員 もう時間ですから終わりますけれども、竹中さん、これは瞬間風速でふえたの減ったのの話じゃだめなんですよ。やはり産業活力再生法でリストラ優遇というか応援税制をやってみたりとか、この間の規制緩和で、これは本当に派遣労働野放し、そういうふうなことを政策的にやってきたことをやはりきちんと見直さないと、ジニ係数などを使って内閣府の方で分析をやっておられますけれども、本当に若者の雇用格差は広がっているんです、深刻な事態なんですよ。
 そこをきちっと見直しをやらないととんでもないことになってしまうということだけ申し上げまして、残念ながら十五分じゃとてもあなたと論議できないので、これで質問を終わります。