162国会 衆院・内閣委員会 2005年6月8日


《参考人質疑》
 海渡参考人・・・海渡 雄一・日本弁護士連合会刑事拘禁制度改革実現本部事務局長代行
 並河参考人・・・並河 信乃・社団法人行革国民会議事務局長         
 本田参考人・・・本田 敏秋・岩手県遠野市長         
 伊藤参考人・・・伊藤 宣子・聖ウルスラ学院英智小・中学校校長       


○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 四人の参考人の皆さんには、きょうは大変御苦労さまでございます。
 私は、最初に海渡参考人に伺いたいと思います。
 日弁連の方でアメリカの刑務所民営化について調査を行っておられますが、刑務所民営化のアメリカの実例を見ると、やはりいろいろな問題が起きているということは、報告にもうたっておられるし、私たちもそう思っております。このアメリカの民営化も、当初は業務委託から始まって、だんだんこじあけてといいますか、もともと構造改革の考え方が、ある意味では規制緩和の一点突破、全面展開という発想があります。ですから、その点をやはりよく見ておくことが大事だと思うんです。
 アメリカが業務委託から始まって、その後、受刑者の過剰拘禁、政府の財政支出削減の問題などを契機に、企業のビジネスチャンスということで民営化がどんどん進んでいったということでありますが、このアメリカの民営化について、どんな状況なのかとか、それから今どんな問題が生まれているのかとか、冒頭に若干お聞きしましたけれども、少し詳しく伺いたいと思います。
    〔木村(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

○海渡参考人 ありがとうございます。
 私のきょう準備しましたペーパーで、先ほどは省略したんですが、最後に二枚、六ページ、七ページに「アメリカにおける民営刑務所の実情」というペーパーをつけておきました。ここにまとめたとおりなんですけれども、簡単に言いますと、アメリカの場合は本当に一つの刑務所を丸ごと民営企業が運営する。公務員がいなくなってしまうんですね。
 そういう実情になっていて、その中でさまざまな、処遇のレベルが低下してしまうとか、ひどい場合であれば受刑者と刑務官との間が非常に険悪な関係になってしまって暴動みたいなことが起きるとか、そういうことが現実に起きまして、一たん民営にしたものを公営に戻した、契約を打ち切ったというようなケースもふえてきています。
 ここにもデータを入れておきましたが、二〇〇一年に六・八%あったものが二〇〇二年の六月には六・一%に減少した。全体では、連邦がまた民営政策を強めているので、州では減っているんですが、連邦でふえて全体の産業としてはバランスをとっているというようなことも出ておりますけれども、非常に大きな問題が生じている。
 私どもの見るところ、やはりアメリカの刑務所民営化の大きな問題点は、もう官が完全に引いてしまったわけですね。もう完全に丸投げしてしまっているということで、しかも民間企業の場合には企業秘密だということで中身がかえって公営よりも見にくくなってしまう。
 官と民が協働でやるという今回の方式の中ではそういうことは避けられると思うんですけれども、こういう民営に全面的に委託してしまうというやり方については、イギリスは別ですけれども、ヨーロッパ大陸では一切行われていないということで、今後とも日本でもそういう政策はとられないことを日弁連としては願っております。

○吉井委員 刑務所の民営化、業務委託という形での民間委託、そこがどれぐらいの範囲まで広がるかということは、刑務所民営化と行刑政策との関係で、やはりどこまでがきちっと歯どめをかけておかなきゃいけないところかとか、その点についてもいろいろ御検討しておられると思うんですが、そこも伺っておきたいと思います。

○海渡参考人 今回の国会の答弁の中で矯正局長が繰り返し言われていることなんですが、公権力の行使に係る部分については矯正行政の中に留保するというふうに言われておりまして、具体的な答弁などを伺っていると、例えば、指紋をとるといった作業も公務員がやります、しかし、とった指紋の整理は民間でやっても構いません。身体検査も、服を脱がせるところは公務員です、しかし、その記録をとったりする部分については民間職員がやれますという、非常に細かい分け方をされていて、考え方は考え方として非常によくわかります。それでいいと思うんですが。
 先ほども申し上げましたように、現実の場面で、例えば民間の職員と受刑者の間でトラブルが起こったときに、即座に対応しないで刑務官を呼びに行くというふうに一応答弁されているんですけれども、それで済まない場合も起こり得る。その場合に、もちろん正当防衛はできると思うんですけれども、民間人でもできるわけですから。
 そういった場合にどういう行動パターンをとるのかということですね。現実の処遇の場面でそういうトラブルが起きたときのことについては、もう少し詰めていただきたい。基本的な考え方は間違っていないと思っていますけれども、トラブルが起きないように、そして民間と公務員の両方の職員に対して十分研修を行っておくといったことが求められるのではないかなと思っております。

○吉井委員 ことし三月のパブリックビジネス・リポートの中で、法務省の矯正局総務課西田博国際企画官の話として、PFI刑務所では、受刑者の生命財産を直接侵害する行為以外何でも民間化するという趣旨の発言を伝えております。だから、公権力の行使の範囲が今も少しあいまいな部分があるわけですよね。
 どこまできっちりできるかということももちろんあるわけですが、公権力行使の範囲がなし崩し的に狭められてきたりすると、その限りなく民営化に接近していくということが、やはりPFI刑務所、大幅な民間委託というところから、民営化刑務所への一歩となることも懸念されるわけですね。
 「自由と正義」の昨年四月号で、ちょうど海渡参考人が二〇〇四年一月の民営刑務所のプランには疑問を呈したいと述べておられますが、もちろん今回のはそこまでいかないという御判断の上なんですが、疑問を呈したいとおっしゃっておられるところをもう少し具体的に、どういう点での疑問点をお持ちなのか、今までの御答弁ともかなり重なる部分もあるかと思うんですが、伺っておきたいと思うんです。

○海渡参考人 おっしゃるとおりで、民間に委託できる業務の部分がどんどん拡大していってしまう、先ほどの西田さんが書かれているものは僕も読んでいないので、ちょっと我々の理解と違うなという印象ですが、少なくともこの国会における答弁の中では、法務省の姿勢としては、公権力の行使にかかわる物理的に受刑者と接触する場面はすべて公務員に留保するというふうにはっきり答えられていますので、その線を堅持していただきたい。そこが崩れてくると、吉井議員お尋ねのような問題点が起こってくる可能性があると思います。
 それからもう一点は、民間企業が刑務所の運営を部分的であれ担うことになると、刑務所の定員を確保しようとする行動に出る可能性があります。要するに、何人収容するかによって委託収入が決まってくるわけですから。
 今は過剰拘禁ですから、お得意さんがいなくなる、受刑者がいなくなるということはないんですけれども、もし今後拘禁者数が減った場合に、やはり刑を厳罰化して受刑者数を確保しろというような形で法務行政に圧力を加えたり、現実にアメリカでは民間刑務所企業がつくっているロビー団体が活動して、三振バッターアウト法、三回目の重大犯罪で無期懲役になるという法律なんですが、そういう法律を推進したりしているといったレポートなどもあるということで、私のペーパーの中で指摘しておきました。そういった二つの点で懸念があるということです。

○吉井委員 海渡参考人に最後の質問で、ヨーロッパの話がありましたけれども、イギリスの刑務所民営化の経過と実情、これを伺いたいと思うんです。

○海渡参考人 イギリスの刑務所の民営化の点に関しましては、二〇〇三年九月十九日付の日弁連の提言の十四ページの部分に書いておきました。アメリカよりは少しおくれて出発しているわけですけれども、サッチャー政権の時代に導入されました。ただ、先ほども申し上げましたが、イギリスの場合は、労働組合対策として公営刑務所の効率を高めるための当て馬的な要素が強くて、そんなに大きくは拡大しておりません。
 現実に政府のレポートなどで効果があったとされているのも、民営刑務所ができたことによって公営刑務所における刑務官が危機感を募らせてよく働くようになった、よってこれは非常に成功だったというような評価になっております。あと、このレポートによりますと、最善の民営刑務所は最善の公営刑務所とほとんど同レベル、しかし最悪の民営刑務所というのは安全性とセキュリティーの面では最悪の公営刑務所をさらに下回っている、そういった実態も報告されております。
 ですから、民営も公営もいいものも悪いものもあるわけですけれども、民営の場合には、悪くなるときはとことん悪くなってしまう可能性がある。もちろん、民営が全部だめというわけじゃないんですけれども、そういう実態が報告されております。

○吉井委員 次に、並河参考人に伺いたいと思います。
 たしかもう十年近く前になりますか、規制緩和特別委員会か何かのときに来ていただいて伺ったような記憶もあるんですが、特区というものには規制緩和を一点突破して全面展開していくという発想がありますけれども、この点でやはり改めて、当時十年ほど前は、もう規制緩和万能論とでもいうべき、何でも規制緩和というのが横行しましたが、明治以来の本当に実態に合わない古ぼけた規制を廃止するとか緩和するのは当然の話です。
 同時に、やはり人類がずっと経験を通じてとか英知の蓄積の中から生まれてきた規制もあればルールもあるわけで、それは維持するのは当たり前の話です。ヨーロッパに比べて、逆に日本の場合、基準が非常に甘いとか、そういうものについてもっと新たに規制やルールをきちんとしていくということは当然大事だと思うんです。
 当時の議論というのは、要するに、規制緩和すれば価格は安くなって消費者利益につながるとか、あるいは官がやめて民にすることでビジネスチャンスが生まれるというビジネスチャンス論とか、それから大量失業者は発生するんだけれども新たな雇用の拡大でカバーできるんだとか、随分いろいろな議論がありました。
 しかし、今幾つかの分野で問題が出ていると思うんです。例えば、安全基準とか安全を守る体制が随分緩和されたり後退してしまって、結果として、この間のJR西日本の事故もそうですし、昨年の関西電力美浜原発の事故のときにも感じましたし、それから最近の航空機の事故です。飛んでいる飛行機から部品がいろいろ落ちてくるとか整備不良とか、整備部門まで規制緩和だといって下請に移され派遣労働に置きかえられていくとか。やはり、規制緩和と言ってきたものが、今検証しなきゃいけないいろいろな問題が出てきていると思うんですね。
 ですから、特区で一点突破ということもあれなんですけれども、まず基本のところで、今改めて、規制緩和と言ってきたものについてどういうふうに考えていくかというところを、長くこの分野にかかわってこられたと思いますので、伺っていきたいと思うんです。

○並河参考人 ただいまの件でございますけれども、十年ぐらい前の時代は、要するに規制の中でもいわゆる経済的規制と社会的規制と二つありまして、経済的規制の話がずっと割合前面に出されてきた。だから、経済分野の話はかなり民間企業の自主性に任せればいいんじゃないかと。問題は、社会的規制の議論は、過剰な規制はおかしいけれども、やはりそれなりに合理化しなくちゃいけない、そういう議論だったと思います。
 これからの問題でございますけれども、社会的な規制、あるいは安全基準だとかそういった問題は、要するに国が全部コントロールするのか、あるいは、これからの地方分権の時代でございますから、その地域地域に応じた規制をその地域の人たちと一緒につくり上げていくという形が望ましいのか。
 そこら辺は物によっていろいろ違うと思いますけれども、そういう仕分けをした議論をしていかなくちゃいけないのかな。規制は何でもなくなるのがいいんだ、そう言われる方もいらっしゃいますけれども、そうではなくて、地域が参加して自分たちのルールをつくっていくという形がこれからの一つの、特に社会的規制の分野については必要なのかな。
 そうなりますと、これは多少神学論争になりますけれども、地方分権と規制緩和と、重なる部分もございますけれども少し違う部分もある。そうしますと、これからの特区の話は規制緩和で出てきた話でありますけれども、自治体の方々がかなり参加して提案しているというならば、もう少し地方分権的な、地域が自主的に自分たちのルールを決めるという形にもうちょっとシフトしたようなやり方があってもいいんじゃないのかな。そこら辺は、もう少しこちらも具体的な個別個別の問題に即して議論していきたい、そういうふうに考えているところです。
 以上です。

○吉井委員 次に、本田参考人に伺いたいと思うんですが、どぶろく特区のこととか、非常にユニークな発想といいますか、いろいろ取り組んでこられた中で、グリーンツーリズムについて、百五十万人ぐらい観光客が来られて、中でも宿泊客が約七万人ぐらいぐっとふえてきたというのをいただいた資料で読ませていただきました。
 このときにリピーターを、長期滞在もそうなんですけれども、やはり繰り返し来られるような魅力をどう付加していくか。リピーターをどうふやすかということと、その中から定住しようかなという方が出てきたときに、やはりその地域の持てる力を生かした内発的発展といいますか、その力を生かした経済とか産業を農業とともにどう生み出していくかというところで、そこのところに市長としても随分御苦労いただいているかと思うんですが、そこのお話を伺いたいと思うんです。

○本田参考人 お答えいたします。
 ただいまのグリーンツーリズムということで、私ども、グリーンツーリズムですと全国一律グリーンツーリズムということで、遠野ツーリズムということを、あえてそういう言葉を使っているわけでございますけれども、これもまたリピーターをふやしたいというような思い。そして、言葉として適切かどうかはあれでございますけれども、外貨を稼ぎたいんだと。
 二万七千、三万三千人のパイの中でいろいろそれを奪い合ってもだめなので、言うなれば首都圏を中心としたところの交流人口をふやした中から外貨をひとつ得ていく、それでそれを地域の産業、経済の活性化に生かしていくんだという部分での戦略を持ちたいというふうに思っていますけれども、それの大きな切り口がグリーンツーリズムであろうかというふうに思っております。
 特にこれからの二〇〇七年ショック、いうところの大量退職時代を迎えるという中にあって、地方の生き残りの中にあって、これを交流人口から定住に持っていける地域資源を我々は持っているんじゃないのかなというふうに思っておりまして、それが農業の振興にもつながる、あるいは商工業の振興にもつながる。
 特に農業の振興の部分につきましては、かなり疲弊してございますので、それを、いうところの交流人口の方々の中から一定の定住人口を見出して、少しでもいいから、農業をやりながら、安定したといいますか、スローライフというような人生を遠野のような地域で楽しみませんか、そういう形のアプローチをしていきたい。
 そのために、やはり我々自身が自分らの住んでいるところに誇りを持たなきゃならない、いいところなんだということを言わなければならない、そのために市民の意識を変えていかなきゃならない。
 そうしますと、首都圏を中心とした都市住民の方々の我々に対する見方、あるいは我々の持っている地域資源といったものも魅力が増してくるんじゃないのかなと思っていまして、そのような形での市民意識の改革とともに地域資源を改めて見直そうということでのグリーンツーリズムに持っていきたいものだなというふうに思っております。

○吉井委員 それでは、多分これは最後になると思いますが、伊藤参考人に伺いたいと思います。
 学校法人として経営されて、学院長、校長先生を務めていただいておりますが、やはり学校法人ですから、企業利益追求に走ったりはもちろんしないわけですから、経営していて利益が生まれてきたときにそれを子供の教育へ還元していく、そこが多分一番神経を使っておられるところだろうと思っておるんです。
 これが学校法人じゃなくて株式会社等企業利益追求型になってしまうと、これは利益が出ないとか経営が傾くと簡単に解散したり売却だということで、子供に被害が及ぶわけですね。そういう点では、教育の内容とともに、やはり子供の教育に利益は還元する、そして安定した経営で将来的に子供の教育に責任を負っていく、多分そういうお考えで臨んでおられるんだろうと思うんですが、この点だけ伺っておきたいと思います。

○伊藤参考人 お答えいたします。
 今の考え方ですが、安定した教育、やはりこれが私どもの今回の特区に踏み切った最大の理由でございます。私学の経営というのは非常に厳しい状況の中にございますので、やはり二十一世紀を担う子供たちに教育をいかに安定した形で継続的に行っていくかというふうなことを考えたところにこの踏み切り方がございました。
 以上、お答えいたします。

○吉井委員 ありがとうございました。


《反対討論》

○松下委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

○吉井委員 私は、日本共産党を代表して、構造改革特別区域法の一部改正案に対し、反対の討論を行います。
 初めに、監獄法等の特例についてです。
 今回の特例による民間委託の刑務所業務は、従来、法務省が公権力と一体不可分のものとして民間に移管できない事務事業としてきたものです。こうした事務をなし崩しに委託することは、国の責任を後退させるものと言わざるを得ません。
 今回の大幅な業務委託は、いわゆるPFI刑務所と表裏一体です。官から民へを標榜する小泉内閣のもとでのPFI刑務所や民間委託の拡大は、民営化への第一歩です。
 次に、私立学校法の特例についてであります。
 特例によって設けられる公私協力学校法人は、学校運営を株式会社等にゆだねるものであります。株式会社の目的は、利潤の追求、株主利益の追求であり、公的サービスの理念とは相入れません。だからこそ、教育基本法第六条では「法律に定める学校は、公の性質をもつもの」と規定しているのであります。
 今回の高校、幼稚園への公設民営方式導入は、義務教育への導入の布石となることを指摘し、討論を終わります。